[16日目]日本酒ペアリング コラム ~マリアージュ vs ペアリング 仁義なき戦い~

By | 2014年11月4日
Pocket

 

■やっぱり『マリアージュ』なのでは?
助手♀「ふむー・・・」
所長J「どうしたんだ?考え込んだりして?」
助手♀「この研究所の名前なんですが、敢えて言います、やっぱり『日本酒 de マリアージュラボ』の方が、世の中のトレンドにはマッチしているんじゃないですか?」
所長J「(ピキッ!)」
助手♀「いや、ほら雑誌の特集とか見ても、『ペアリング』って言葉はあまり出てきませんよ。『マリアージュ』の方がよいのでは?」
所長J「だから独身の前で、その言葉を使うのはやめろといっているじゃないか?」
助手♀「これは失礼しました。ですが所長、やっぱりそれが理由でこの研究所は『ペアリングラボ』にしているんですか?」

所長J「え?違うよ?何言ってんの?」

 

■ビールの世界のペアリングとマリアージュ
助手♀「え?いや、ちょっと待ってください。だって確かに第10日目のラボの時にそういっていたじゃないですか?
所長J「言われてみればそんなようなことを言った記憶もあるけれども、それは本当の理由じゃないよ。」
助手♀「そうだったんですか?」
所長J「んだんだ、よーぐきげ孫作。」
助手♀「(まごさく???)」
所長J「まず私はビールの世界で一般的にされれていることを日本酒の世界に持ち込んでいるだけなんだ。んで、実はビールの世界ではあまり『マリアージュ』という言葉は使われていない。よって私は『ペアリング』と言う言葉を使っているんだよ。ほら、私が持ってる本もタイトルは『Pairing』になっているし。」

 

ビールの世界では「Pairing」の方がメジャー?

ビールの世界では「Pairing」の方がメジャー?

助手♀「これは洋書ですか?」
所長J「私が持っている二冊のビール本は洋書だね。日本には理論的な『ペアリング』研究の本はほとんどない。『ビールに合うおつまみ』をたくさん紹介した本とかはあるけど。しかしね、そもそもビールと言うのは100を越えるスタイルがあると言われているんだ。それぞれのスタイルは甘さや苦さや酸っぱさが異なるので、オールマイティに『ビール合うおつまみ』なんていうのは、本来的にはありえない話なんだよ。」

 

■日本酒マリアージュと偽装結婚
助手♀「なるほどそうなんですね(まずい!このままだとまたいつものようにビールの話に引きずりこまれる)。あ、でも、そうだ、『Wine』で検索すると、結構『Marriage』でヒットするようですが、ほら見てみてください。」
Wine Marriageで検索すると食べ物とのマリアージュのページもたくさんヒットする

Wine Marriageで検索すると食べ物とのマリアージュのページもたくさんヒットする

所長J「確かに・・・なるほど、そういうことか!日本酒で『マリアージュ』という言葉を使う人が多いのは、私と違ってビールじゃなくて、ワインから日本酒に流れてくる人がたくさんいるせいかもしれないね。」
助手♀利き酒師とソムリエの両方の免許を持っている人はたくさん居る見たいです。」
所長J「まぁ私はどっちも持っていないわけだが・・・一応ビールにもビアテイスターとかの資格はあるけど、利き酒師やソムリエに比べたらマイナーな資格だよな、おい。まぁとりあえずそういう流れがあると言うことはなんとなく分かった・・・分かったが・・・」

助手♀「?」

所長J「じゃあついでになんだけど、試しに『Sake』『Marriage』で検索してみたらどうだい?」
助手♀「『Sake』『Marriage』・・・ですか?何件ぐらいヒットするのかなぁ・・・って、あれ?」
もしかして『偽装結婚』・・・違うわい!

もしかして『偽装結婚』!

助手♀「『Fake Marriage』に誘導された?」

所長J「はい、それが本当の答えだよ。」

助手♀「!?」

所長J「・・・私としては『Fake Marriage』、つまり英語で検索した時に、Google先生が『偽装結婚』に誘導するような言葉をあまり使いたくないんだよ。いや、もちろん『日本酒』『マリアージュ』でも意味は通じる正しい言葉だから、それを使おうとすることを止めるつもりは一切ないんだけど。」

助手♀「・・・・・・・・・」

所長J「なにがなんでも『Sake』『Marriage』と言う言葉をグローバルに普及・浸透させるんだと言う気概があるなら、今すぐこのラボの名前は『日本酒 de マリアージュラボ』に変えるし、英語版のサイト(今はないけど)のカテゴリーも『Marriage Laboratory of Sake and Food』に変える。でもそうじゃないなら長いもの(『ペアリング』『Pairing』)に巻かれておいたほうが良い訳だよ。少なくとも『Sake』『Pairing』ではすでに寿司に合う日本酒とかまっとうな検索結果が返ってくるわけだし。
助手♀「なるほどそういうことですか。所長にはマリアージュを普及させるような気概は・・・?」
所長J「ない。世界の人は『Sake』『Pairing』で検索するが、日本の人は『日本酒』『マリアージュ』で検索するというようなガラパゴスは良くないんじゃないかな?同じ概念を指す言葉を二個も三個も定義したり、1つの言葉が複数の意味を持つのは確実にコミュニケーションのロスに繋がるわけだし・・・」
言葉の不一致がもたらすコミュニケーションロス

むかし所長Jと助手♂の間で本当にあったアホな会話

所長J「敢えて『マリアージュ』という言葉を使わなければならない理由が特にないなら、既にある標準化された言葉の使い方に乗っかっておく方が日本酒は世界に打って出やすいんじゃないかな?いや、もちろん『マリアージュという言葉で打って出る』と言うのも戦略の一つだろうけど、外国における言葉のルールを塗り替えるのには相当な労力が必要になる・・・日本酒には他にやるべきことがたくさんある様に私には思えるんだ。」 

 

■それでも敢えて『マリアージュ』

所長J「それでも『日本酒』『マリアージュ』という言葉を使いたいのなら、第13日目の実食編でやったような『口内調味』と同じ意味で使うなら、それには意味があると私は思う。
助手♀「『口内調味』ってなんでしたっけ?」
所長J「スペアリブやハンバーグを食べてから、口にそれらが残っているうちに酒を流し込んで口の中で咀嚼してぐちゃぐたに混ぜ合わせる方法だよ。」
助手♀「そうでした。忘れてました。しかしなんでまた、そのぐちゃぐちゃの状態を『マリアージュ』と?」
所長J「いや、実際の結婚なんて男と女のぐちゃぐちゃした状態が常であって、『マリアージュ』って言葉からイメージされるような美しくきれいなもんじゃないよ。それでも人が結婚するのは、そのぐちゃぐちゃした状態から1人では得られないような喜びや楽しさを得られるからだろう?そう考えると『マリアージュ』は『口内調味』でやろうとしていることを説明するのに、丁度良い言葉だと思わないかい?」
助手♀「なるほど、そういう考えになるんですか。確かにそうかもしれませんが・・・」

助手♀「それを独身のあなたが言いますかふつう?」

Pocket

One thought on “[16日目]日本酒ペアリング コラム ~マリアージュ vs ペアリング 仁義なき戦い~

  1. Pingback: 第3回:池袋の日本酒を皮切りに | ちょこます chokomasu

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です