■菊姫山廃純米とのペアリング2:vsトマトと茄子のマヨチーズ焼き
所長J「あと2品あります。まずはトマトと茄子のマヨチーズ焼きです」
所長J「トマトやチーズの旨味での相乗効果を狙うのと、塩味で旨味の『対比効果』を狙うのは酢豚と同じ。米の甘味でマヨネーズの酸味に対する『抑制効果』を狙うのも同じだね。」
助手♀「一方アミノ酸の酸味でトマトとの甘味やマジックソルトの塩味を『抑制する』・・・と。なるほど、見える、私にも見えるぞっ、酒と食べ物の間をつなぐ線がッ!」
所長J「とはいえ、相互効果は万能ではない。理論が生み出した人類の悲しい変種かもしれないのだ!」
助手♀「(大佐、そのセリフは文脈的にちょっと無理があるのでは? (; ̄ー ̄A ))・・・そういえばオーブン焼きの方の味の強さが『中』になっていますね。酢豚は『強』でしたが。そもそも味の強さってなんですか?」
所長J「主観的な『弱・中・強』だよ、別に戦闘力とかそういう訳じゃなくて。別の良い方をすると『味の濃さ』ともいえるかもしれない」
助手♀「味の濃さ???」
所 長J「いや、これ結構重要な要素なのよ。『味が濃い日本酒』に『味が薄い料理』を合わせると、そもそも一方的に酒の味が勝ってしまって、相互効果自体が全 然生まれないこともあるんだ。だから同じトマトやチーズを使った料理でも、カプレーゼのようにスターターとして食べるような料理だと、菊姫は全然合わない 可能性が高い。」
助手♀「スタートから日本酒なんて、なかなか頼みませんけど。普通ビールとかですから。」
所 長J「まぁ周りの雰囲気に合わせてビールを頼んでいると言うのもあるけど、飲み会でも最初は枝豆とかサラダとか軽めのモノから注文するでしょ?だから、ペ アリングの理論的にも強い『いきなり日本酒を頼まない』というのは正しいわけだよ。で、枝豆とかサラダにはどんなビールは合うのかと言う話だけど・・・」
助手♀「それは家で個人的にやってください!」
■菊姫山廃純米とのペアリング3:vsイカの墨作り
助手♀「最後は和食ですか?墨作りというのは初めて聞きました」
所長J「墨作りというのは富山の名産品で、イカ墨を使った塩辛だね。まぁ私は食べたことはないんで、考えられる成分だけでペアリングを考えたわけだけども。『土地ペアリング』をヒントにはしてみた。」
助手♀「『土地ペアリング』???」
所長J「お酒と食べ物の産地を合わせるペアリングだね。『その土地で伝統的に飲まれてきた酒にはその土地で伝統的に食べられてきたものをペアリングする』というもの。ドイツビールとジャガイモとか言われたらイメージできるかな?」
助手♀「そういうことですか。歴史と時間が生み出したペアリングですね。」
所 長J「いいこと言うねぇ。お酒と料理を合わせて飲むのは、別に現代に始まった習慣じゃないし、昔の人だって酒に合わない料理をわざわざ一緒に食べたくなん かなかっただろう?だから交通の手段や保存の手段がない狭い生活空間の中で、お酒の側も料理の側もそれぞれ歩み寄ってベストペアリングを自然に生み出して きたんだよ。まぁ仙台の伊達家のように『俺は狩りが好きだ。だからイノシシに合う日本酒を作れ』と酒蔵に無茶振りするようなケースもあったかもしれないけ ど。」
助手♀「何の話ですか?」
所長J「あ、これは次回のペアリングの話だった。おっほん、そろそろ長くなってきたのでこのペアリングでの相互効果を簡単にまとめると、この墨作りで狙うのは、旨味たっぷりのイカ・イカ墨との『相乗効果』。それからわたの苦みによる『対比効果』。」
助手♀「それすごくイメージできます。」
所長J「でしょ?酒好きは苦い物が好きな人が多いけど、苦手と言う人もいるよね。菊姫の甘さでわたの苦みを少し抑えたら、苦味が苦手な人でも食べやすくなるかもしれない。」
助手♀「料理の強さは中なんですか?結構味が濃そうなイメージですが。」
所長J「イカとイカ墨に火を入れて焼いた方が味は濃くなるので、『その上がまだある』的な意味での『中』かな。相対評価だね。確かに助手♀がいうように、墨作り自体は結構味が濃いと思う。飲み会だったら終盤のまったりした辺りで日本酒と一緒に頼むのが良いだろうね。」
助手♀「最初の注文で塩辛をいきなり頼む人もいますけど。」
所長J「塩辛なんてビールと合わせてもあまり美味くないだろう。相互効果の理論では『合わないペアリング』を考えることもできる。たとえばビールに合わない料理と言うと・・・」
助手♀「だからそれは家で個人的にしてください」
所長J「ちっ。」
助手♀「さて、3品もあれば料理としては十分ですね。」
所長J「そうだな、最初の理論編はここまで。ではさっそくシェフなおみに発注するか。」
所長J「・・・・・・・・・あ、もしもし?作ってもらいたい料理があるのだが・・・・・・」