■ようやく実食、その前に菊姫山廃純米を再度おさらい
所長J「それにしても、現在9時なわけだが、『夜の』じゃなくて、『朝の』。朝から日本酒。」
助手♂「しかも『山廃』」
所長J「朝から重たいなこの企画・・・しかし、改めて飲んでみると・・・この酒こんなに酸っぱかったかなぁ?」
助手♀「お米の甘さよりも、山廃の酸っぱさの方が際立った感じですね。」
所長J「うむ、初回からいきなり想定外だが、とりあえず食べてみるか。食べてみなけりゃわからないものもあるさ。」
■初戦:菊姫山廃純米 vs 酢豚(仮)
一同「はい、いただきます」
シェフなおみ「なんか、ビジュアルがあまり『酢豚』らしくないな。味がしなさそうだ。この酢豚さ、みんなが中華料理屋で食べる酢豚と比べてどう思う?」
助手♀「味はしてますよ。酢豚って言うぐらいだから、もうちょっと『酸っぱい』イメージでしたが、どちらかと言うと『甘い』かもしれません。」
シェフなおみ「中華料理屋でこれが『お待たせしました、酢豚です』と言われて出てきたら怒ると思う。」
所長J「今回渡したC〇〇kpadのレシピが良くなかったかな・・・選んだのは私だが。」
助手♀「伏字になってませんよ、それじゃ。」
所長J「『酢豚』じゃないけど『酢豚(仮)』ということで。レシピを選ぶ時は、もう少し慎重に選ぼう・・・それにしてもこの菊姫山廃純米・・・繰り返しになるけど想像以上に酸っぱいな・・・うーむー」
助手♂「でも逆に言うと、菊姫と甘い『酢豚(仮)』を一緒に食べると、菊姫の酸っぱさはあまり気にならなくなってるような気がする。」
所長J「それが『抑制効果』だね。」
助手♀「もともとの理論編だと、菊姫の甘さが、酢豚の酸っぱさを抑制するという話でしたよね?」
所長J「そうだったな(汗)」
助手♂「でも実際食べてみると、『酢豚の甘さが、菊姫の酸っぱさを抑制している』と言う感じですね。菊姫は酸っぱさが抑えられて、むしろお米の甘さが引き立っているような感じがします。」
所長J「そりゃ想定外だったなぁ。ここまで酸っぱいと『菊姫山廃純米は苦手だ』という人もいるかもしれないが、食べ物の甘さで酸っぱさを抑えると、苦手な部分を抑えて飲みやすくなるのか。」
助手♀「そういうのもペアリングの妙味ですね。」
所長J「それにしても朝からこんな脂っこいもの普通は食べられないかと思ったが・・・みんな意外と箸がすすんでいるね。」
助手♀「酸味には脂味を『抑制』する効果がありましたよね。日本酒の酸味が豚の油をきれいに洗い流してくれているような気がします。」
所長J「もともと酢豚自体に酢が使われているから、酢豚単体で脂の『抑制効果』があるかと思ったが。この『酢豚(仮)』では、菊姫の酸味がその役割を担ったということだね。」
助手♂「相互効果のなかで旨味×旨味の『相乗効果』は分かるような分からないような・・・『豚肉だけ』の時、あるいは『日本酒だけ』の時とは違う味がする気がするけど、上手く言葉にはできない。」
所長J「旨味×旨味の『相乗効果』って、説明するのが難しいかもね。『シイタケ×昆布』にはうまみの『相乗効果』があるけど、『じゃそれは何味か言ってみ』といわれても、説明できないしな。」
■「菊姫山廃純米 vs 酢豚(仮)」 ネガティブな面
助手♂「いい部分だけじゃなくて、苦手な部分もあるかなと思います。」
所長J「それはどんな?」
助手♂「豚肉と日本酒はペアリングするととてもスッと食べられるのだけど、なんか『残り香』が喉のあたりにまとわりつくような気がする。」
助手♀「言われてみればそんな気もするけど、私は苦手じゃないかな?」
所長J「その辺は人の好みの問題でもあるか。そういえばシェフなおみは酒があまり進んでいないような気がするけど・・・。」
シェフなおみ「この菊姫、そもそもあまり好きなタイプの日本酒じゃないんだな、これが。」
所長J「ぐはっ・・・それを早く言ってよ。」
■第二回戦:菊姫山廃純米 vs茄子とトマトのオーブン焼き
助手♂「俺、茄子だめなんです」
所長J「え”!?じゃ、とりあえずトマトだけ食べといて。」
シェフなおみ「このオーブン焼きはどう?」
助手♀「全体に味が薄いような気がします。でもおいしい。」
シェフなおみ「ちょっとクレイジーソルト足りなかったかな。」
助手♂「チーズとベーコンは意外と日本酒に合ってるような気がする。もともと味が濃いからかな?」
所長J「チーズやベーコンの旨味と、菊姫の旨味は上手く響き合うのかな。トマトの旨味は・・・そうでもないような気がするな。」
助手♀「バジルは日本酒と合うなぁ。なんでだろ?」
所長J「香りの強い物と日本酒は合わないかと思っていたけど、純米吟醸酒に限った話かな。純米酒は香りが穏やかなので、食べ物の方の香りが強くてもあまり喧嘩しないのかもしれない。」
助手♂「でも酢豚と比べると、あまり合わないかなぁ・・・という気がする。なんだろう、ペッパーのせいかなぁ?」
シェフなおみ「ペッパーは使ってないよ。」
助手♂「え、ああそう!?」
助手♀「合わないというより、これだったら白ワインの方が合うかな・・・ってのが頭に浮かんじゃう。合うか合わないかで言えば、合わなくもないけど、別に日本酒じゃなくても良い・・・って言う感じでしょうか?」
所長J「そりゃそうだな、そもそも和食じゃないし、ワインの方が連想しやすいか、やっぱり」
■第1回ラボ 総評
所長J「と言うわけで第一回の菊姫ラボの実践編はここまでですが、やってみてどうでしたか?」
助手♂「科学的にペアリングを考えるというのは面白いと思った。」
助手♀「理論に基づけば、自分でも説明ができるというのも面白いですね。」
所長J「ソムリエなんかも本当は裏でこうした理論に基づいて、ワインと食べ物の『マリアージュ(笑)』を考えているんだろうけど、まだまだ日本酒だと『利き酒師の匠の技的』な『神秘的』なトレンドの方が強いのかな、と思います。」
シェフなおみ「改めて原点に戻るけど、そもそも今回なんでこの料理が選ばれたんだっけ?日本食じゃなくて、中華とイタリアンが?」
所長J「初回のインパクト的にはやはり洋食かなと思ったというのもあるし、あとピュアな日本食って家であまり作らないような気がする。結局今回一番ハードルが高かったのが『墨作り』だっというのもあろうし。」
助手♂「そういう意味では、今後カレーとかハンバーグとか、家庭で作りそうなものとのペアリングを考えるというのも面白いかもしれませんね。」
助手♀「煙草と日本酒は合うんですか?」
所長J「と、突然何を言いだすの?」
助手♀「いや、ふとそう思ったので」
シェフなおみ「自由人か!」
所長J「・・・とはいえ、一概に捨て置く意見でもないかな。『ペアリングラボ』と銘打ってるけど、必ずしも『食べ物とのペアリング』に話を限定しているわけじゃないしね。『飲み物と日本酒』とか『嗜好品と日本酒』とかのペアリングを考えるのも面白いかもしれないよ。」
シェフなおみ「そのへんもおいおいやっていこうか」