[13日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 実食編①はこちら
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■ペアリング実食 二回戦 v.s. 煮込みハンバーグ
助手♀「そういえば、なんで普通のハンバーグじゃなくて、煮込みハンバーグだったんですか?12日目を見ていて分かると思いますが、結構焼いてから煮込むのはめんどくさかったのですが。」
所長J「ふむ、これは次回のテーマになるのだが、『濃淡』を酒に合わせるためだよ。焼く+煮込むで味の濃さを高めた方が、今回用意した酒には合うかなぁと思って。」
助手♀「なるほど、そういう意図があったんですねぇ。そういうことならペアリングには期待しましょう。」
所長J「さて、スペアリブも煮込みハンバーグも煮込んだ肉料理だが、一点違うところがあるとすると、スペアリブが甘いのに対して、煮込みハンバーグがだいぶしょっぱい点かな。しょっぱいのであれば、『スイカに塩』とおなじように、ハンバーグのしょっぱさが、勝山の甘さを『対比効果』で引き立ててくれる可能性が出てきます。どう影響するか、確認してみましょう。」
助手♀「まずは秋鹿からですね。」
助手♂「(もぐもぐ)・・・うむむ、こりゃ甘い、ハンバーグが。期待していた塩味が足りていないような・・・。ハンバーグ単体としては普通に美味しいですが・・・。」
助手♀「普通に?」
助手♂「あ、いや、『すごく・・・美味しい』です。だがしかし、ハンバーグを食べた後で日本酒を食べると、『あれ?なんで俺日本酒飲んでんの?』って感じがする。」
助手♀「前回の『茄子とトマトのオーブン焼き』の時も『これだったら日本酒じゃなくて白ワインで良いなぁ』って感じがしましたが、それと似ています。『これなら赤ワインかビールでいいんじゃないかなぁ』って感じです。」
助手♂「だな。このペアリングにはスペアリブほどの感動はないかもしれない・・・秋鹿の『切る感じ』『リセットする感じ』はいいが、煮込みハンバーグを切りきれていないような感じはします。」
助手♀「そうですね・・・・・・ちょっと、所長?ところでなんでさっきから黙っているんですか?」
所長J「えっ、あ?なるほどそっかそっか・・・よーし残念ながら秋鹿があまり合わないなら、次行ってみよう。行ってみようじゃないか。」
助手♂「勝山選手は・・・(もぐもぐ)メロンの香りの立ち上り方はより一層強くなった感じがします。」
所長J「きっと、ハンバーグがスペアリブよりも熱々だからだろう。」
助手♀「しかし、口内調味で咀嚼してみると・・・(もぐもぐ、ゴックン)ちょっとケチャップの味が強すぎて、やはりスペアリブほどの感動はないかもしれませんね。」
所長J「そうか?ちょっと待ってほしい・・・もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ、ゴックン・・・・・・・・・うーん、口の中でゆっくりと時間をかけて咀嚼をして、ソースが居なくなった後ぐらいになると、スペアリブの時のような旨味の重なり合いを感じるよ。」
助手♀「そうですか・・・もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・うーん、なるほど、なんとなく分かるような気がします・・・たしかに所長のおっしゃる通り・・・(ぷるぷる)おっしゃる通りなのですがっ!」
助手♀「つまるところ、このハンバーグ、煮込む必要はなかったと?」
所長J「・・・・・・・・・」
助手♂「・・・ハンバーグは『焼けば』よかったね。」
所長J「そうだね。」
助手♀「『そうだね。』じゃなーい。」
所長J「ちょっと待て、なんだそのストウブの鍋は?話せば分かる!」
助手♀「問答無用!いやー煮込むのめんどくさかった。所長、覚悟はよろしいですか?」
所長J「えっ?ちょっ、ぐぎゃー・・・『濃淡のミス』の行きつき先は・・・死・・・覚えておこう・・・ぐふっ。」
助手♂「所長!?(あ、死んだ・・・)」
助手♀「さてと、『焼いたハンバーグ』には勝山が合うことが分かったので、最後のラタトュイユに行ってみましょう。」
■ペアリング実食 三回戦 v.s. ラタトゥイユ
助手♂「続いてラタトゥイユですが(ビクビク)・・・所長が残した研究ノートによると、『肉とは違う種類の旨味を重ねる』というのが趣旨だそうです。日本酒の旨味はおもに『グルタミン酸』、肉の旨味は『イノシン酸』・・・だが、野菜の旨味は酒と同じ『グルタミン酸』・・・が多い・・・とのことです。ラタトュイユとのペアリングでは酒の『グルタミン酸』と料理の『グルタミン酸』を合わせることが肉の場合とどう違うかの相性を確認したいとのことです。」
助手♀「なるほど・・・野菜の旨味ですか。そういえば鶏肉入れちゃいましたけど、大丈夫ですよね?」
助手♂「え?は、はい。大丈夫なんじゃないでしょうか?所長ノートにも『鶏肉のイノシン酸は四天王の中でも最弱・・・』って書いてありますし。」
助手♀「ですよねっ!(キラッ☆)」
助手♂「では早速秋鹿選手から行ってみたいと思うのですが、(もぐもぐ)秋鹿がラタトュイユに合うか合わないかで言うと・・・合わない・・・のでは?いや、ラタトュイユ自身は普通に美味いのですが・・・」
助手♀「普通に?」
助手♂「いや『とても』美味しいです。『とっても』。」
助手♀「ですよね。しかし、ペアリングとしては確かに微妙です。」
助手♂「勝山先生も・・・秋鹿選手よりは合うような気がしますが、スペアリブやハンバーグの時と比べると、面白味を欠いています。むしろ一番最初に飲んだ時の『これ食中酒じゃないなぁ』感がまた出てきてしまっているような気がする。」
助手♀「そうですね、ラタトュイユがしょっぱいので、勝山の甘味はぐっと引き立ってきますが、旨味の共演とまでは行きつかない。やはり『グルタミン酸×グルタミン酸』より、『日本酒のグルタミン酸に肉のイノシン酸を合わせた』方が良いんでしょうか?」
助手♂「そうなのかもしれない。」
助手♀「となると、結論を語るにはまだ早いかもしれませんが、結局『日本酒は肉に合うが、野菜に合わない』っていうのが、今回の結論なんでしょうか?」
所長J「今、なんて言った!?」
助手♂「おわっ!所長・・・死んだのでは?」
所長J「こんなタイミングで死んでいられるかっ!それよりさっきの台詞、もう一回いってみて。」
助手♀「さっきのって?なんでしたっけ?結局『日本酒は肉に合うが、野菜に合わない』・・・って、あれ?」
所長J「気づいたか・・・?」
助手♂「どういうことです?」
所長J「今あたりまえのように『日本酒は肉に合うが、野菜に合わない』と言ったが・・・今日のペアリングをして実食するまでは、おそらくまったく真逆の考えをしていたはずだ。」
助手♂「そういえば。しかし、たしかにここまで『ど真ん中の肉料理』が日本酒に合うとは思っていませんでした。スペアリブ→煮込みハンバーグ→ラタトュイユと順番に食べてみたら、秋鹿や勝山が野菜と・・・合わなくはないのですが、肉よりは合わないというのがはっきりわかりました。」
所長J「そういう意味では、最後にラタトュイユを持ってきたのは正解だったな。」
助手♂「この料理の出し方にはそういう意図があったんですね。」
助手♀「なるほど・・・つまりあれですか?」
助手♀「わたしには合わない料理を、狙って作らせたということですか?」
所長J「いや、だから、演出上そうなっているだけであって悪気は決して・・・って、だから、なんだその鍋は?」
助手♀「所長、安らかに眠ってください、滅!」
所長J「ぐぎゃーっ!」
助手♂「所長!?(あ、また死んだ・・・)」
助手♀「・・・というわけで、第二弾の実食編はこれまでです。あとは研究結果をレポートにまとめれば、第二弾企画はおしまいです。」
助手♂「(あと、まだ一回あるのか・・・長いなぁ)。」
[15日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 反省会編に続く。
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