Author Archives: J

[9日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 企画編

日本酒 de ペアリングラボ1日目はこちらから

 

■安西先生・・・肉が食いたいです

所長J「出だしからアレだが、名台詞をなにもこんな使い方しなくても・・・だいたい私は安西先生じゃないぞ・・・」

助手♂「いや、とにかく肉が食いたいです。切実に。この台詞、どうしても肉が食いたいという切迫感を伝えるという意味で、とてもいい台詞だと思いませんか。」

所長J「いや、これじゃ名シーンが台無しだよ。み〇いがただの『焼肉に連れってほしい腹ペコ高校三年生』だよ。そんなに肉が食いたいのであれば、ほれ。」

ローストビーフだ!ところで後ろの泡立つ液体は?

ローストビーフだ!ところで後ろの泡立つ液体は?

助手♂「ローストビーフじゃないですか?ちょっと生だけど」

所長J「(うっさいなぁ・・・失敗したんだよ)」

助手♂「ところで後ろの泡立つ液体は?」

所長J「お前さんにはこれがビール以外の飲み物に見えるのか?」

助手♂「いや、ビールなのは見てわかりますけど・・・赤肉と言えば飲み物は赤ワインかなと思ったので。」

所長J「赤肉と言えば・・・飲み物は赤ワイン・・・と言ったな・・・くくっ・・・

お前がそう思うんならそうなんだろう、お前の中ではな」

助手♂「!?」

所長J「・・・すまんかった、仕事が忙しすぎて、今日は機嫌が悪い(※所長は本職ではただの社畜です)。話を戻すとローストビーフにバッチリあうビールと言うのもあるのだよ。さっき『赤いワインと赤い肉』といったが、ビールにも『レッドビール』と言うジャンルがある。」

ブルゴーニュドフランドル

ブルゴーニュ・ド・フランドル・・・ベルギーのビールだ。ロゼワイン的に使える万能ビールだぞ

所 長J「(写真はちょっと写りが悪いから赤くはないが)このブルゴーニュ・ド・フランドルはベルギーのレッドビールに自然発酵のランビックを混ぜたビール で、華やかさと酸味が程よくまじりあって、肉の旨味を引き立ててくれる。赤ワインか白ワインかと言うとどちらかと言うとロゼワイン的な位置付けになるビー ルだけども、赤肉だけでなくさまざまな料理と合わせることができる万能選手だね。」

助手♂「なるほど、そんなビールがあるんですね・・・・・・ところで所長、一応聞いておきますけど、覚えていますか、この研究所の名前?」

所長J「えっ?ビール de ペアリングラボだっけ?」

助手♂「ちがいます!」

 

■肉料理には赤ワイン?

助手♂「し ばらく(もぐもぐ)間隔があくとすぐに企画の(もぐもぐ)趣旨をわすれてしまうんですね(ぐびぐび)。所長のビール好きは(もぐもぐ)わかりましたけど (ぐびぐび)、このラボは(もぐもぐ)日本酒 de ペアリングラボ(ぐびぐび)なので(もぐもぐ)、もう少し(ぐびぐび)日本酒の話をですね(もぐもぐ)してくださいよ(ぐびぐび)」

所長J「(おまえも結局ビール飲んで肉喰ってるだけやないか・・・)肉とのペアリングなら前回の企画(第1弾「菊姫」編)でもやっただろうに、酢豚で。」

助手♂「た しかに肉と日本酒と言う組み合わせは斬新でしたが、肉と言えばやっぱり『旨味』!じゃないですか?(もぐもぐ)前回のペアリングでは甘さと酸味の『抑制効 果』ははっきりわかりましたが、『肉の旨味と日本酒の旨味の相乗効果』はよくわからなかったですよね?(もぐもぐ)どうでしょう?肉にはどんな日本酒が合 うのか、ラボで研究してみませんか?(ぐびぐび)」

所長J「そういえばそうだったなぁ・・・ぶっちゃけ、こういうのもアレなんだけど、酢豚と菊姫だと『旨みの相乗効果』は私もよくわかんなかったんだよなぁ。」

助手♂「このままじゃみんなローストビーフには(もぐもぐ)赤ワインを合わせてしまいますよ(ぐびぐび)」

所長J「なぬ!それはまずい!(そういいながら、お前が飲んでるその液体の名前を言ってみろ!)」

やっぱり肉には赤ワイン・・・なのかな?

やっぱり肉には赤ワイン・・・なのかな?どうでもいいんだけど少しは私の分の肉を残しておいてもらいたいのだが(所長J)

 

■伊達正宗は肉食系男子?

助手♂「えっとですね・・・これまでずっと『日本酒と言えば刺身』みたいに思っていたので、前回のラボ以来、肉と日本酒のペアリングになんか目覚めてしまいそうなのです。」

所長J「そうか、たしかに日本酒と言うと生魚のイメージがつよいかもしれないなぁ。これは助手♂に限らず、世間一般的にそうなのかもしれない。」

助手♂「肉と日本酒のペアリングは、最近たまーにですが聞くようになりました。」

所 長J「確かにそういうのを前面に押してる店もあるなぁ。でも肉とのペアリングは別に最近になって出てきた話じゃないぞ。日本人は牛肉を食べるようになった のは文明開化以後だけど、それより前はイノシシとか鹿とかを狩ってきて、それをアテにして日本酒を飲んだりしていたんだ。特に有名なのが伊達正宗公だ ね。」

助手♂「伊達正宗?」

所長J「知らない?『鷹野之掟』とか?」

助手♂「なんですか、それ?」

所長J「鷹狩りが好きだった伊達正宗は、鷹狩り5か条の掟を作っているんだ」

***************************************************************

陸奥守鷹野之掟

一 供之者以下、所々百姓以下にたいし、慮外有へからす、

一 朝食之上、酒こさかつきにて三益、但、時に五も、

一 晩二者心次第、但、大酒停止々々、

一 毎日ともに不参者も、むさと不可居事、

一 今度雪風に、おとなけなく、あとに残るもの科代之事、

***************************************************************

助手♂「『朝食之上、酒こさかつきにて三益、但、時に五も』だから、『鷹狩の朝は3杯までは飲んでも良い、でも時には5杯までは飲んでもOK』ということですか?」

所長J「そう。正宗公も『朝は3杯まで・・・』と途中まで書きかけて、『よく考えたら、俺いつも朝5杯飲んでるわー』と思って『但、時に五も』と書き足したんじゃないかな?」

助手♂「お茶目で正直ですね」

所長J「狩りに行く前に5杯飲むってのもすごいけど、もっとすごいのは、狩りから帰ってきた後は『晩二者心次第』、つまり狩った肉をアテに『心行くまで好きなだけ飲めい!』と正宗公は言ってるわけだね(『ただし、大酒はだめ』=『但、大酒停止々々』)。米所仙台の日本酒は、こうした正宗公の狩りと肉食に400年前にはもう付き合わされていたわけさ。」

助手♂「なるほど肉と日本酒のペアリングはそんなに浅いトレンドじゃないんですね。」

所長J「そういうこと。特に正宗公は『俺が狩りで肉を捕ってきたんだから、当然今夜は肉に合う日本酒がでてくるんだろうな?』と言っては酒蔵を困らせていたとかいないとか?」

助手♂「おおっ!所長!私も『伊達正宗ごっこ』がしたいです!『おい、酒を持ていっ!』」

所長J「『ははっ、これに』・・・って何をやらせる?(笑) それ、助手♀にやらせたらただのセクハラだからね。・・・にしても、よしわかった、それじゃ今回の企画では我々も伊達正宗になって肉と日本酒のペアリングを楽しんでみるか?ひと肌脱いじゃうよ!!」

助手♂「・・・いや脱がなくていいです、所長が脱いだところは見たくないので」

所長J「ちょっ!!!ここまで盛り上げといて、なんでそこだけ冷静なん?」

助手♂「いいからいいから、とっとと肉に合わせる日本酒を選んでくださいな。」

 

第2弾「独眼竜に俺はなる!」 理論編①に続く

 

[8日目]実践編 「菊姫」とのペアリング 実食!

■ようやく実食、その前に菊姫山廃純米を再度おさらい

 

記念すべき最初の日本酒は「菊姫」山廃仕込み純米酒

朝から日本酒である。「しかも山廃」

 

所長J「それにしても、現在9時なわけだが、『夜の』じゃなくて、『朝の』。朝から日本酒。」

助手♂「しかも『山廃』」

所長J「朝から重たいなこの企画・・・しかし、改めて飲んでみると・・・この酒こんなに酸っぱかったかなぁ?」

助手♀「お米の甘さよりも、山廃の酸っぱさの方が際立った感じですね。」

所長J「うむ、初回からいきなり想定外だが、とりあえず食べてみるか。食べてみなけりゃわからないものもあるさ。」

 

■初戦:菊姫山廃純米 vs 酢豚(仮)

IMG_2300

一同「はい、いただきます」

シェフなおみ「なんか、ビジュアルがあまり『酢豚』らしくないな。味がしなさそうだ。この酢豚さ、みんなが中華料理屋で食べる酢豚と比べてどう思う?」

助手♀「味はしてますよ。酢豚って言うぐらいだから、もうちょっと『酸っぱい』イメージでしたが、どちらかと言うと『甘い』かもしれません。」

シェフなおみ「中華料理屋でこれが『お待たせしました、酢豚です』と言われて出てきたら怒ると思う。」

所長J「今回渡したC〇〇kpadのレシピが良くなかったかな・・・選んだのは私だが。」

助手♀「伏字になってませんよ、それじゃ。」

所長J「『酢豚』じゃないけど『酢豚(仮)』ということで。レシピを選ぶ時は、もう少し慎重に選ぼう・・・それにしてもこの菊姫山廃純米・・・繰り返しになるけど想像以上に酸っぱいな・・・うーむー」

助手♂「でも逆に言うと、菊姫と甘い『酢豚(仮)』を一緒に食べると、菊姫の酸っぱさはあまり気にならなくなってるような気がする。」

所長J「それが『抑制効果』だね。」

助手♀「もともとの理論編だと、菊姫の甘さが、酢豚の酸っぱさを抑制するという話でしたよね?」

所長J「そうだったな(汗)」

助手♂「でも実際食べてみると、『酢豚の甘さが、菊姫の酸っぱさを抑制している』と言う感じですね。菊姫は酸っぱさが抑えられて、むしろお米の甘さが引き立っているような感じがします。」

所長J「そりゃ想定外だったなぁ。ここまで酸っぱいと『菊姫山廃純米は苦手だ』という人もいるかもしれないが、食べ物の甘さで酸っぱさを抑えると、苦手な部分を抑えて飲みやすくなるのか。」

助手♀「そういうのもペアリングの妙味ですね。」

 

所長J「それにしても朝からこんな脂っこいもの普通は食べられないかと思ったが・・・みんな意外と箸がすすんでいるね。」

助手♀「酸味には脂味を『抑制』する効果がありましたよね。日本酒の酸味が豚の油をきれいに洗い流してくれているような気がします。」

所長J「もともと酢豚自体に酢が使われているから、酢豚単体で脂の『抑制効果』があるかと思ったが。この『酢豚(仮)』では、菊姫の酸味がその役割を担ったということだね。」

助手♂「相互効果のなかで旨味×旨味の『相乗効果』は分かるような分からないような・・・『豚肉だけ』の時、あるいは『日本酒だけ』の時とは違う味がする気がするけど、上手く言葉にはできない。」

所長J「旨味×旨味の『相乗効果』って、説明するのが難しいかもね。『シイタケ×昆布』にはうまみの『相乗効果』があるけど、『じゃそれは何味か言ってみ』といわれても、説明できないしな。」

 

■「菊姫山廃純米 vs 酢豚(仮)」 ネガティブな面

助手♂「いい部分だけじゃなくて、苦手な部分もあるかなと思います。」

所長J「それはどんな?」

助手♂「豚肉と日本酒はペアリングするととてもスッと食べられるのだけど、なんか『残り香』が喉のあたりにまとわりつくような気がする。」

助手♀「言われてみればそんな気もするけど、私は苦手じゃないかな?」

所長J「その辺は人の好みの問題でもあるか。そういえばシェフなおみは酒があまり進んでいないような気がするけど・・・。」

シェフなおみ「この菊姫、そもそもあまり好きなタイプの日本酒じゃないんだな、これが。」

所長J「ぐはっ・・・それを早く言ってよ。」

 

■第二回戦:菊姫山廃純米 vs茄子とトマトのオーブン焼き

IMG_2301

助手♂「俺、茄子だめなんです」

所長J「え”!?じゃ、とりあえずトマトだけ食べといて。」

シェフなおみ「このオーブン焼きはどう?」

助手♀「全体に味が薄いような気がします。でもおいしい。」

シェフなおみ「ちょっとクレイジーソルト足りなかったかな。」

助手♂「チーズとベーコンは意外と日本酒に合ってるような気がする。もともと味が濃いからかな?」

所長J「チーズやベーコンの旨味と、菊姫の旨味は上手く響き合うのかな。トマトの旨味は・・・そうでもないような気がするな。」

助手♀「バジルは日本酒と合うなぁ。なんでだろ?」

所長J「香りの強い物と日本酒は合わないかと思っていたけど、純米吟醸酒に限った話かな。純米酒は香りが穏やかなので、食べ物の方の香りが強くてもあまり喧嘩しないのかもしれない。」

 

助手♂「でも酢豚と比べると、あまり合わないかなぁ・・・という気がする。なんだろう、ペッパーのせいかなぁ?」

シェフなおみ「ペッパーは使ってないよ。」

助手♂「え、ああそう!?」

助手♀「合わないというより、これだったら白ワインの方が合うかな・・・ってのが頭に浮かんじゃう。合うか合わないかで言えば、合わなくもないけど、別に日本酒じゃなくても良い・・・って言う感じでしょうか?」

所長J「そりゃそうだな、そもそも和食じゃないし、ワインの方が連想しやすいか、やっぱり」

 

■第1回ラボ 総評

IMG_2302IMG_2303

所長J「と言うわけで第一回の菊姫ラボの実践編はここまでですが、やってみてどうでしたか?」

助手♂「科学的にペアリングを考えるというのは面白いと思った。」

助手♀「理論に基づけば、自分でも説明ができるというのも面白いですね。」

所長J「ソムリエなんかも本当は裏でこうした理論に基づいて、ワインと食べ物の『マリアージュ(笑)』を考えているんだろうけど、まだまだ日本酒だと『利き酒師の匠の技的』な『神秘的』なトレンドの方が強いのかな、と思います。」

シェフなおみ「改めて原点に戻るけど、そもそも今回なんでこの料理が選ばれたんだっけ?日本食じゃなくて、中華とイタリアンが?」

所長J「初回のインパクト的にはやはり洋食かなと思ったというのもあるし、あとピュアな日本食って家であまり作らないような気がする。結局今回一番ハードルが高かったのが『墨作り』だっというのもあろうし。」

助手♂「そういう意味では、今後カレーとかハンバーグとか、家庭で作りそうなものとのペアリングを考えるというのも面白いかもしれませんね。」

助手♀「煙草と日本酒は合うんですか?」

所長J「と、突然何を言いだすの?」

助手♀「いや、ふとそう思ったので」

シェフなおみ「自由人か!」

所長J「・・・とはいえ、一概に捨て置く意見でもないかな。『ペアリングラボ』と銘打ってるけど、必ずしも『食べ物とのペアリング』に話を限定しているわけじゃないしね。『飲み物と日本酒』とか『嗜好品と日本酒』とかのペアリングを考えるのも面白いかもしれないよ。」

シェフなおみ「そのへんもおいおいやっていこうか」

[7日目]実践編 「菊姫」とのペアリング Cooking!

■料理は3品用意すると言ったな…あれは嘘だ

 

IMG_2263

本日の材料です

シェフなおみ「というわけで、前回のおさらいから入ると、依頼を受けて、酢豚とオーブン焼きとイカの墨作り3品を作ると言ったな…あれは嘘だ!」

所長J「(なぜコマンドー…?)イカがなくなイカ?」

シェフなおみ「(なぜイカ娘…?)イカは力尽きたのでナシ。剝くことを想像したら普通に無理だった。というわけで今日は酢豚とオーブン焼きの二品!」

所長J「え”?あー、えー、まぁ、この企画…等身大の人間がやっていることがウリなので、力尽きることもあるよね…あるかな?…まぁあるよね。墨作りは外注でも良かったかなぁと思っていたので、また機会を改めるかな(しぶしぶ)」

 

イカ墨作りの通販サイト

http://www.kouzushi.com/kurodukuri.html

 

助手♂「これが墨作りですか、本当に黒い。基本は塩辛なんですね。ご飯に合いそう。」

所長J「それ、ペアリングでは大事な要素かもしれない。」

助手♂「ご飯に合いそうってことですか?」

所長J「ご飯に限らずかな。菊姫はコメコメしたお酒なので、『あー米食いたい』という気持ちにさせるおかずには基本合うと思うんだよね(前回勢いで言ったが、これはやっぱり重要な要素だと思う)」

助手♂「なるほど。まぁでも今日はお米がありますよね。」

所長J「それはちょっと失敗だったかもね。敢えて普通の食卓からあるべきものを引いて、酒で補うというのもペアリングの面白さだと思う。例えばビールが酸っぱければ、唐揚げにレモンはいらないのだ。」

助手♂「そこまでするかって感じはしますが。」

所長J「極端な例だがね。それはそうと菊姫の普通の純米はともかく、山廃の方がどのぐらいコメコメしてるかは、記憶があいまいなんだけど。もしかしたら今日はアテが外れているかもしれないなぁ(すごく嫌な予感がしている)」

シェフなおみ「はいはい、おしゃべりはそのぐらいにして、料理作るから手伝う手伝う!」

所長J「ほいほい」

IMG_2266-001

肉を切ります

シェフなおみ「まずは酢豚。肉は一口大に。」

助手♂「包丁が・・・見えない!!!」

所長J「(ただカメラのシャッタースピードが遅いだけだよ)」

助手♂「それにしても、ものすごく肉肉しい。」

所長J「旨味の強い酒には旨味の強い食材を被せるのが王道だから、菊姫のように旨味のある酒には、やはり豚とか牛とか旨味のあるものを合わせなければね。」

IMG_2285

片栗粉を付けて、揚げ気味に焼きます

助手♂「すでにこの時点で美味そうです!」

シェフなおみ「これに黒酢の合わせ調味料を和えると…黒酢なんて生まれた始めて買ったよ」

所長J「そうなの?言ってくれれば家から持ってきたのだが・・・」

シェフなおみ「砂糖大さじ2、大さじ2、黒酢大さじ3、小さじ1/4…結構砂糖使うんだな。あまり普段味付けに砂糖を使わないんだよな」

所長J「そうなの?えーと、普段作らないジャンルのものを作らせてしまっている、もしかして?」

シェフなおみ「うん、その通り」

 

ジュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュー

ジュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュー

ジュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュー

ジュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュージュー

 

所長J「(・・・会話を録音していたのだが、焼いている音しかしてないなこれ)」

IMG_2290

シェフなおみ「続いてオーブン焼き。」

所長J「(グラタン皿が二つ・・・ということは、オーブン料理は普段から作るのだな・・・)」

シェフなおみ「(!!こいつ・・・俺の脳の中に直接・・・!!)」

所長J「いや、話しかけてないから。」

所長J「オーブン焼きの材料はトマト、なす、ベーコン、マジックソルト、バジル、チーズ、マヨネーズとなっています。どの材料とっても、日本酒を連想させるものじゃないな、これ。」

シェフなおみ「これをオーブンでチーズが焦げるまで焼くと。」

所長J「ぼちぼち助手♀も来るかなぁ」

 

ピンポーン!

 

シェフなおみ「いいタイミング、さて食うぞ」

8日目 食べて理論を確認するまでがペアリングラボです

 

[6日目]理論編 「菊姫」とのペアリング vsオーブン焼き、墨作り

■菊姫山廃純米とのペアリング2:vsトマトと茄子のマヨチーズ焼き

所長J「あと2品あります。まずはトマトと茄子のマヨチーズ焼きです」

菊姫×グラタン

 

所長J「トマトやチーズの旨味での相乗効果を狙うのと、塩味で旨味の『対比効果』を狙うのは酢豚と同じ。米の甘味でマヨネーズの酸味に対する『抑制効果』を狙うのも同じだね。」

助手♀「一方アミノ酸の酸味でトマトとの甘味やマジックソルトの塩味を『抑制する』・・・と。なるほど、見える、私にも見えるぞっ、酒と食べ物の間をつなぐ線がッ!」

所長J「とはいえ、相互効果は万能ではない。理論が生み出した人類の悲しい変種かもしれないのだ!」

助手♀「(大佐、そのセリフは文脈的にちょっと無理があるのでは? (; ̄ー ̄A ))・・・そういえばオーブン焼きの方の味の強さが『中』になっていますね。酢豚は『強』でしたが。そもそも味の強さってなんですか?」

所長J「主観的な『弱・中・強』だよ、別に戦闘力とかそういう訳じゃなくて。別の良い方をすると『味の濃さ』ともいえるかもしれない」

助手♀「味の濃さ???」

所 長J「いや、これ結構重要な要素なのよ。『味が濃い日本酒』に『味が薄い料理』を合わせると、そもそも一方的に酒の味が勝ってしまって、相互効果自体が全 然生まれないこともあるんだ。だから同じトマトやチーズを使った料理でも、カプレーゼのようにスターターとして食べるような料理だと、菊姫は全然合わない 可能性が高い。」

助手♀「スタートから日本酒なんて、なかなか頼みませんけど。普通ビールとかですから。」

所 長J「まぁ周りの雰囲気に合わせてビールを頼んでいると言うのもあるけど、飲み会でも最初は枝豆とかサラダとか軽めのモノから注文するでしょ?だから、ペ アリングの理論的にも強い『いきなり日本酒を頼まない』というのは正しいわけだよ。で、枝豆とかサラダにはどんなビールは合うのかと言う話だけど・・・」

助手♀「それは家で個人的にやってください!」

 

■菊姫山廃純米とのペアリング3:vsイカの墨作り

菊姫×イカ

助手♀「最後は和食ですか?墨作りというのは初めて聞きました」

所長J「墨作りというのは富山の名産品で、イカ墨を使った塩辛だね。まぁ私は食べたことはないんで、考えられる成分だけでペアリングを考えたわけだけども。『土地ペアリング』をヒントにはしてみた。」

助手♀「『土地ペアリング』???」

所長J「お酒と食べ物の産地を合わせるペアリングだね。『その土地で伝統的に飲まれてきた酒にはその土地で伝統的に食べられてきたものをペアリングする』というもの。ドイツビールとジャガイモとか言われたらイメージできるかな?」

助手♀「そういうことですか。歴史と時間が生み出したペアリングですね。」

所 長J「いいこと言うねぇ。お酒と料理を合わせて飲むのは、別に現代に始まった習慣じゃないし、昔の人だって酒に合わない料理をわざわざ一緒に食べたくなん かなかっただろう?だから交通の手段や保存の手段がない狭い生活空間の中で、お酒の側も料理の側もそれぞれ歩み寄ってベストペアリングを自然に生み出して きたんだよ。まぁ仙台の伊達家のように『俺は狩りが好きだ。だからイノシシに合う日本酒を作れ』と酒蔵に無茶振りするようなケースもあったかもしれないけ ど。」

助手♀「何の話ですか?」

所長J「あ、これは次回のペアリングの話だった。おっほん、そろそろ長くなってきたのでこのペアリングでの相互効果を簡単にまとめると、この墨作りで狙うのは、旨味たっぷりのイカ・イカ墨との『相乗効果』。それからわたの苦みによる『対比効果』。」

助手♀「それすごくイメージできます。」

所長J「でしょ?酒好きは苦い物が好きな人が多いけど、苦手と言う人もいるよね。菊姫の甘さでわたの苦みを少し抑えたら、苦味が苦手な人でも食べやすくなるかもしれない。」

助手♀「料理の強さは中なんですか?結構味が濃そうなイメージですが。」

所長J「イカとイカ墨に火を入れて焼いた方が味は濃くなるので、『その上がまだある』的な意味での『中』かな。相対評価だね。確かに助手♀がいうように、墨作り自体は結構味が濃いと思う。飲み会だったら終盤のまったりした辺りで日本酒と一緒に頼むのが良いだろうね。」

助手♀「最初の注文で塩辛をいきなり頼む人もいますけど。」

所長J「塩辛なんてビールと合わせてもあまり美味くないだろう。相互効果の理論では『合わないペアリング』を考えることもできる。たとえばビールに合わない料理と言うと・・・」

助手♀「だからそれは家で個人的にしてください」

所長J「ちっ。」

 

 

助手♀「さて、3品もあれば料理としては十分ですね。」

所長J「そうだな、最初の理論編はここまで。ではさっそくシェフなおみに発注するか。」

所長J「・・・・・・・・・あ、もしもし?作ってもらいたい料理があるのだが・・・・・・」

7日目 いよいよ実践編です

[5日目]理論編 「菊姫」とのペアリング vs酢豚

■菊姫山廃純米とのペアリング1:vs酢豚

助手♀「お酒の特徴はだいたいわかりました。所長のキャラも・・・それはさておき、で、結局このお酒にはどんな食べ物が合いそうなんですか?」

所長J「甘さ、酸っぱさ、旨み、お米の香り・・・この辺を軸にペアリングの相手を選ぶことになるけど、まずパッと思いついたのはこれだね。」

菊姫×酢豚

助手♀「中華?中華料理と日本酒を合わせるんですか?」

所長J「日本酒と中華料理はあいまぁす!」

助手♀「!?」

所 長J「いや、合うんだよ。言うだけならタダなので、きちんと裏付けをしておくと、これだけ旨味のある酒だから、まずは相互効果で旨味を生かさない手はな い。旨味は別の旨味での『相乗効果』を狙うか、あるいは塩味・苦味・渋みを使って『対比効果』を狙うことができる。酢豚の材料の中でも旨味成分のある豚肉 や黒酢ソースや、苦味のあるピーマンなんかが日本酒のアミノ酸の旨味を上手く引き出してくれると思う。」

所長J「またこの酒の第二の特徴である甘味は、酸っぱさや苦味と『抑制効果』があるので、菊姫の甘さが黒酢の酸っぱさやピーマンの苦みを抑えてくれる効果も期待できる。」

助手♀「酸っぱいのが苦手な人でも食べられるようになるってことですね。」

所長J「そういうこと。菊姫山廃純米の方にも酸っぱさがあるから上手く『抑制効果』が出るかは、実際に食ってみないとわからんけれども。あとはその酸味だけど、玉ねぎの甘味や豚肉の脂身を上手く抑える効果があると思う。」

助手♀「炊いたお米の香りは、どこに紐付くんですか?」

所長J「日本人は酢豚を酢豚だけでは食べないから、菊姫のお米の香りは『酢豚食べたら、米食いてぇ』って気分に応えてくれる」

助手♀「そんな効果もあるんですか!?」

所長J「いや、今のは適当に言った。」

助手♀「・・・・・・・・・そうですか。ほいで、一番下の味の強さっていうのはなんですか?」

所長J「ん?それ?これは次の料理で説明した方がわかりやすいかもしれないな。」

6日目に続く 料理はあと2品あります

[4日目] 日本酒ペアリング 第1弾「菊姫」 理論編 

■菊姫山廃純米ってどんなお酒?

所長J「前回役割分担で確認したように、理論編は所長である私の担当です。」

所長J「理論編では、まずお酒を選んで、それにあう料理を『味の相互効果』をベースに選んでみます。この後続く実践編では、実際に料理を調理してみてお酒と合うかどうか、つまり理論編が正しかったかどうかを証明するわけです。料理はシェフなおみに作ってもらって、助手♂助手♀に食べてもらって、理論の検証をします。もちろん私も、食べます。」

所長J「説明がくどくなるので、理論編はさくっと行きましょう、今回のお酒はこちらです。」

 

記念すべき最初の日本酒は「菊姫」

記念すべき最初の日本酒は「菊姫」

 

所長J「菊姫 山廃純米です」

助手♀「なんで今回はこのお酒なんですか?(その前になんで私呼ばれたんですか?食べるだけの担当なのに)」

所 長J「みんな忘れているかもしれないが、そもそも私は飲んだことがある日本酒が少ないんだ。飲んだことがない酒は味が分からないから分かる酒を選んだとい うのが主な理由だね(なんで呼ばれたか?そりゃ決まってるだろう・・・この形式で一人でしゃべり続けるのが早くもきつくなってきたからだ。)。」

助手♀「そうでした。所長の専門はビールですもんね(なるほど、独身乙)。」

 

所長J「今日もビールがうまい」

所長J「今日もビールがうまい」

 

所長J「あとは入手し易さと言うのも考慮した。いきなりマニアックな酒を題材に選んでも、そもそもこの記事を読んでる人が味を想像できんだろうし・・・。」

助手♀「そうですね、菊姫だったら大きな酒屋ならおいてあることが多いし、居酒屋での遭遇率も高いですしね。」

所長J「そういうことだね。ほんじゃまず、菊姫山廃純米の味をおさらいしてみよう。」

 

■今回のお酒 菊姫 山廃純米

菊姫の味・香りの特徴

菊姫の味・香りの特徴

 

助手♀「甘くて、酸っぱくて、旨みが合って、お米の香りがするお酒ということですね。」

所 長J「メーカーや酒屋の説明文にはそう書いてあることが多いね。さっきは『飲んだことがある酒だ』といったものの、正直どのぐらい酸っぱかったかはよく覚 えていないな。甘いといってもべたっとした甘さじゃないのは、菊姫の中で『甘さ』と『酸っぱさ』の『抑制効果』が働いているからじゃないかな。もし酸っぱ くないお酒だったとしたら、甘みは抑制されないから、甘さが前面に出てくると思う。」

助手♀「菊姫はとてもお米にこだわっている酒造ですよね。普通酒も山田錦100%を使ったりして、とにかくお米の旨みが凝縮されたお酒です。」

所長J「まぁお米自体には旨み成分はほとんど無いから、よく日本酒の評価で言われる『米本来の旨み』なんてもの無いんだけどね」

助手♀「あれ?そうでしたっけ?」

所長J「そりゃ、お米の主成分は『でんぷん』だもの。旨み成分は『アミノ酸』だけど、アミノ酸は米の『タンパク質』を麹菌が分解しないと出てこないものだよ。その意味では米本来の旨みなんてものはないわけだ」

助手♀「そうはいっても結局米由来の成分であることは変わらない訳ですから、それって若干『へ理屈』っぽいですね」

所長J「・・・そんなことはわかって言ってることだよ。こんなうんちくを述べてもめんどくさい奴だと思われるだけだから、良い子のみんなは間違っても飲み会でこんな説明をするのはやめようね。」

助手♀「そんなんだからその歳になっても独り身なんですよ。」

所長J「残念、私は分かってて独身を演じているんだよ。」

5日目に続く 菊姫にはこんな料理を合わせてみよう

[3日目]ラボの目指す姿とアプローチ(まとめ)

■ペアリングは神秘の秘法ではない!

助手♀「・・・なるほど難しそうだけどなんとなくわかりました。ソムリエやビアテイスターはこういうチャートを頭に入れながら料理のペアリングを考えているんですね?」

シェフなおみ「それはわからん…『KKD』で言ってるだけのソムリエもいるとは思う」

助手♂「KKD?」

シェフなおみ「経験・勘・度胸ね。ペアリングなんてある意味『勢いで言ったもん勝ち』的なところもある。ソムリエに『この料理とこのワインは合いますよ』と言われたら実際に合ってるかどうかわからなくても、なんとなく合ってるような気がしてくるだろう?むしろ合ってないと思っている自分がおかしいんじゃないかとすら思ってしまう。経験が少ないからそれが分からないのだと思い込んでしまう。」

所長J「もちろん経験やある種のインスピレーションと言うのも大事だとは思うけれども、それだとテイスティングやペアリングは『神秘の秘法』的なモノになってしまうからね。でもきちっと味の相互作用のフレームに落とせば、誰でも『なぜその組み合わせが合うか?』『あるいは合わないか』を説明することができる はずなんだよ。」

助手♂「なるほど」

所長J「日本酒は特に、伝統と格式のある飲み物だから、こうした理論的なアプローチがまだまだ足りてないんじゃないかと思うんだ。」

シェフなおみ「だから敢えて日本酒は初心者のJが所長なわけ」

 

■ラボの目指す姿とアプローチ

所長J「では3日間の締めくくりと言うことで、このラボが目指す姿と、アプローチ方法をまとめてみたよ。」

日本酒 de ペアリングラボの趣旨

日本酒 de ペアリングラボの目指す姿とアプローチ

 

所長J「研究所内の役割分担はこうだ」

所長J: 味の相互効果に基づく酒と料理のペアリングの仮説構築

シェフなおみ:所長Jから提示された料理の作成

助手♀&助手♂:シェフなおみが作った料理の実食とペアリング仮説の検証

 

助手♂「合点。私たちは食べて感想を言えばいいわけですね。」

所長J「平たく言うとそうだな。さてと、最初の説明としてはこんなものかな。理論ばかり話していてもしょうがないから早速最初のペアリングに取り掛かかろうか」

4日目に続く 記念すべき最初のお酒は???

[2日目]ワレニ策アリ 味の相互効果とは?

日本酒 de ペアリングラボ1日目はこちらから

 

■味の相互効果ってなんだろう?

諸葛亮先生もお墨付きの相互効果とは???

諸葛亮先生もお墨付きの相互効果とは???

 

所長J「そういうわけで私は日本酒と食べ物のどれが直接会うかはわからない。」

助手♂「それでよく自分のこと所長って言えますね?」

所長J「(なんだ?相手が格下だと手のひら返すタイプか?)『直接は』・・・と言ったよ。逆を言うと『間接的にはある意味分かる』ということだよ。ちょっとこれを見てもらいたい。」

 

味の相互作用チャート

味の相互効果って?

 

助手♀「えーと、なんですか、これは?」

シェフなおみ「これは味の『相互効果』を示したチャートだ。」

助手♀「味の『ソウゴコウカ』?」

助手♂「・・・って何ですか?」

所長J「聞きなれない言葉だったかな?例えばということで一つ身近な例を挙げると、助手♀はスイカに塩を振る、振らない?」

助手♀「スイカといえば塩ですよねっ!」

所長J「甘いスイカにわざわざしょっぱい塩をかけるのはなぜだろう?助手♀はなんとなく塩をかけてるわけじゃないよね?」

助手♀「そのほうがスイカの甘みが増すからです。」

シェフなおみ「それが『相互効果』だ。」

助手♂「いまいちまだよくわからんのですが・・・いや、スイカに塩は分かるのですが、それがなんだというんです?」

所長J「スイカに塩というのは一つの例にすぎないのだが、スイカと塩だけではなく、どんな食べ物でもペアリングすることによって単体では味わうことが出来ない味を引き出すことができるんだ。」

シェフなおみ「それが『相互効果』だ(大事だから二回言った)。」

 

■4つの味の「相互効果」

所長J「チャートなかに引かれている矢印はそれぞれ『どんな味がどんな効果をもたらすか?』を表しているんだ。例えば『塩味』から『甘味』に実線が延びているけど、この線が『スイカと塩』の関係にあてはまる。この線が意味するのは『塩味は甘味に対する対比効果がある』と言うことだね。」

助手♂「『タイヒコウカ』・・・すいません、自分四文字熟語に弱いのですが、また新しい用語ですか?」

所長J「『相互作用』には四つの種類があるといわれている。一つ一つ説明すると、まず一つ目が『相乗効果』。これは、しいたけの出汁と昆布出汁をあわせると旨みがグッと増すようにお互いの味を高めあう効果のこと。二つ目が『抑制効果』。これはお互いの味を打ち消しあう効果のこと」

助手♀「打ち消しあっちゃダメなんじゃないですか?」

シェフなおみ「いいところを打ち消しあうのは良くないが、食べ物にはネガティブな味もあれば、人によっては苦手な味もある」

所長J「『コーヒーは苦み走ったブラックに限るッ!』という人もいれば、世の中には『コーヒーは苦いから苦手』という人もいる。ミルクを入れると苦味が抑えられるので、苦いのが苦手と言う人でもコーヒーを飲めるようになる、これが『抑制効果』だね・・・助手♀はブラックでぐいぐい飲んでそうだけど」

シェフなおみ「カレーを食べながらラッシーを飲むのも似たようなもんだ。水だと辛さは抑えられないが、乳製品だと結構辛味に対する『抑制効果』がある」

助手♂「なるほどっ!うーん、なんか研究所っぽくなってきましたね」

所長J「三つ目の『変調効果』というのは・・・ほら、昔流行っただろう、プリン+しょうゆ=ウニとかきゅうり+蜂蜜=メロンとか。」

助手♂「中学で良くやりました。牛乳+たくあん=コーンポタージュ」

所長J「(歳がばれるぞ・・・)掛け合わせることで、まったく違う味が生まれてくる効果『変調効果』だね。まぁあまり日本酒ではそういうのは期待できないんだけど。最後が『対比効果』でこれがスイカに塩をかけるのと同じ効果、つまり片方の味でもう一方を際立たせる効果。」

助手♀「『①相乗効果』『②抑制効果』『③変調効果』『④対比効果』・・・なるほど難しそうだけどなんとなくわかりました。ソムリエやビアテイスターはこういうチャートを頭に入れながら料理のペアリングを考えているんですね?」

酒と食べ物の相互効果

4つの味の「相互作用」

所長J「『理論的に』なのか『経験的に』なのかという違いはあれど、まぁ大よそここに書かれたようなことを頭の中で考えてたり思い浮かべているソムリエが多いんじゃないかな」

しぇふなおみ「そうとも限らんよ」

 

3日目に続く ラボの目指す姿とアプローチ(まとめ)

 

[1日目]日本酒 de ペアリングラボってなんだ?

■ペアリングってなんだろう?

助手♀「こんにちは。日本酒deペアリングラボです。いきなり本題に進むのもアレなので、まずは企画の趣旨をおさらいしておきましょうか?じゃ所長から!」

J「所長…なんだっけ?」

助手♀「『日本酒 de ペアリングラボ』だから研究所の所長ですよ。それともユニットリーダーとかのほうが良いですか?」

J「日本酒企画の趣旨的には『割烹着』とかが合うような気もするが・・・ユニットリーダーよりは所長の方がいいかなぁ。」

私が所長です

私が所長です

J改め所長J「では改めて・・・『わたしが所長です』。ラボの所長にさっきなりました。簡単に企画の趣旨を説明したいと思うけど、助手♂助手♀はお酒と料理のペアリングって聞いたことありますか?」

助手♀「ソムリエが料理に合うワインを勧めてくれる、あれですか?」

助手♂「マリアージュとか?」

所長J「そう、ワインの世界では良く聞く話かもしれないね。赤ワインに肉、白ワインに魚という基本から始まって、様々なワインが料理との相性というコンテキストの中で語られています。助手♂の言った通りマリアージュなんて仰々しい言い方もするけど・・・。」

助手♂「要は『食い合わせ』のことですね。」

所 長J「いかにも。まぁ合コンだったら『マリアージュ(キリっ!)』と言っても良いかもしれないが、おっさんの集まりでマリアージュとか言うと『マリアー ジュ(www)』となるから、TPOは考えて表現は使ったらいいと思うよ。まぁここでは中性的な言い方で『ペアリング』と言う言葉を使っている。」

シェフなおみ「そもそもワインにせよ日本酒にせよ酒単体で飲むのはよほどの『呑兵衛』だし、多くの人は料理と一緒に酒を楽しむもんだ。」

助手♀「おわっ!突然出てきたっ!」

シェフなおみ「(台本通りだし、さっきから居たんだが…)にも拘らず日本酒は料理との組み合わせで語られるバリエーションが狭いというか、少ないように思わない?例えば日本酒に合う料理というとどんなものが思い浮かぶ?」

助手♀「日本酒に合うというと・・・刺身とか。刺身とか刺身とか刺身とか・・・。」

助手♂「これからの季節(注:記事が書かれたのは7月です)だと鰻とかも合うような気がするけど・・・そこから先となるとあまり「これ」っていう料理は出てこないですね。」

シェフなおみ「そう、この食べ物との組み合わせの狭さが、実は日本酒を手に取る機会の損失の原因なんじゃないか・・・という仮説に我々は立っている。」

所長J「例えばなんだけど、コンビニでチーズとハムを籠に入れて、今、お酒コーナーに立っていたと想像してみてほしい。数ある酒の中から助手♂が手に取る酒はなんだろう?」

助手♂「ワインかな?」

所長J「だろうね。でも仮にチーズにめちゃめちゃ合う日本酒があったとしたら・・・どうする?」

シェフなおみ「ハムに日本酒がめちゃめちゃ合うとしたら・・・どうする?」

助手♀「えっ!?チーズやハムに日本酒が合うんですか?」

所長J「・・・いや、それは分からない(キッパリ)。このラボは別に所長が『ペアリングの答え』を持っているわけではないからね。」

助手♀「そうなんですか、所長?」

シェフなおみ「そらそうよ。だってこの人・・・普段飲むのはビールとかワインだかんね。」

所長J「ビールと食べ物のペアリングならいくらでも語れるが、日本酒と食べ物のどれが合うかなんて・・・まぁ正直よくはわからないね。ちなみにベルギーのセゾン・デュポンというビールとパッタイはものすごくあうぞ」

所長はビールのペアリングの専門家???

所長はビールのペアリングの専門家???

タイとベルギーの共演「パッタイ×セゾンデュポン」

タイとベルギーの共演「パッタイ×セゾンデュポン」

 

助手♂「大丈夫かいな、この企画・・・」

シェフなおみ「大丈夫、なんの策もなくこんな企画が始まったわけじゃないから。」

所長J「我に策アリ・・・」

助手♂「策・・・?」

 

2日目につづく ワレニ策アリ 味の相互効果とは?