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[19日目]日本酒ペアリング③ 味の濃淡と相互効果 理論編1

[18日目]日本酒ペアリング③ 味の濃淡と相互効果 企画編はこちらから

 

■日本酒ペアリングの全体像

所長J「何かを食べたり飲んだりした時に、『おいしい』と感じるのはどんな時かを考えてみると、実にいろんな要素が複雑に絡み合っているよね。やっぱり気の合う友達とかと食べるご飯と言うのは旨いわけだし、好きではない上司と食べるご飯と言うのはあまりおいしくなかったりする。」

助手♂「緊張しながらご飯を食べると、全然味がしなかったりもしますよね。」

所長J「そういうのもあるね!置かれている状況によってはカレーですら無味無臭になる時がある。そういうような『雰囲気』とか『空気』とのペアリングというのも大事だ。ただしかしまぁこの研究所はそういうペアリングまではカバーしきれないかな。他の人と接する時に、人がどういう感情を抱くかと言うのは、それこそ千差万別であるし・・・。」

助手♂「そりゃそうですね。『上司と飲む獺祭』と『恋人と飲む獺祭』の味とか比べてみても面白いかもしれませんが、きりがないでしょう。」

所長J「しかしそういう食事以外の環境要因を除くと、ある程度人の『味の感じ方』を決める要素と言うのは体系化できるような気がする。もちろんペアリングについても。まぁちょっとこれを見てほしい。」

日本酒ペアリングの全体像

助手♂「なんですかこれは?」

所長J「これがペアリングの全体像だよ(これをまとめるのに2週間もかかってしまったので、前回の更新から間が開いたわけだが)。」

助手♂「ん?最初は味の相互効果だけだったのですが、なんか増えましたね。しかしこれだけ?たった4つの要素でペアリングの良し悪しが決まるというのですか!?」

所長J「もちろん今日(19日目)まで見てきたように、一番最初の『①味』の部分だけみても、ものすごく複雑な要素が絡まっている。だけど、大きな括りで言えば、基本的にはこの4つと言ってしまって良い・・・と今は考えている。」

助手♂「『①味』の部分をこれまでわれわれは攻略してきたわけですがその先に『②濃淡』と『③風味』と・・・ん?『④食味』があるということですか?うーん、『①味』はこれまでやってきたので分かるんですけど、『①味』と『③風味』と『④食味』はどう違うんですか?」

所長J「待てあわてるな、これは孔明の罠だ。」

助手♂「ん、あ?え?罠?」

所長J「そうだ、罠だ(とりあえず、今後のネタがなくなるから、今日は煙に巻いておこう)。まずは双児宮の『②濃淡』を倒してからじゃないと、先にある巨蟹宮(『③濃淡』)には進めない。巨蟹宮にはデスマスクが居る。」

助手♂「デスマスクってある意味ではブタゴリラ以上にひどいネーミングですよね。」

所長J「『悪魔君』って命名するようなもんだしな。親の気が知れんよ。しかもあいつイタリア人って設定なのにな。イタリア人なのに、『デス』で『マスク』ってどういう設定なんだよ、おい。」

助手♂「・・・それに突っ込みだすと、今日の記事は『聖闘士には同じ技は通用しないはずなのに、なぜミロはスカーレットニードルは15回も撃てるのか?それって技の前提おかしくない?』とかいう内容で埋め尽くされることになるので、それはひとまず置いておくとして、『②濃淡』の話をしましょう。」

所長J「おお、そうだった(よし、流れを戻したぞ)!さて、ペアリングにおける『②濃淡』というのは、一言でいうとカンタン、要は『酒と食べ物の味の濃さを合わせましょう』と言うことなんだ。」

助手♂「味の濃さ・・・ですか?」

所長J「そう。食べ物にも薄味とか濃口とかあるように、日本酒にも味が濃いものや水に近い薄い物がある。味の濃い食べ物に味の薄い日本酒は合わないし、味の薄い食べ物に味の濃い日本酒は合わない。」

助手♂「『②濃淡』ってそれだけのことなんですか?」

所長J「そう、それだけ。でも日本酒にせよ料理にせよ、いろんな要素によって濃淡は左右されるから、ピタリとバランスさせるのは難しい事なんだよ。ちょっと調味料や調理法を変えるだけで食べ物の濃淡はすぐに変わってしまうからね。」

 

■味の濃淡の構成要素

食べ物と酒の濃淡

所長J「まず酒の濃淡の方を考えてみると、例えばビールだと「原材料」でほとんど決まってしまい一部「製法(ドライホッピングするとかローストするとか長期貯蔵するとか)」に左右される。それに対して、日本酒というのは「原材料」のみならず「製法」が左右する部分と言うのが結構大きい。」

助手♂「同じ原材料を使っても、山廃と大吟醸では山廃の方が味が濃いですね。」

所長J「いかにも。あとビールやワインと日本酒が一番違う点は、温度によって濃淡をコントロールする余地があるところだね。」

助手♂「日本酒を熱燗にすると、いろんな香りが立ってきますね・・・むせ返るようなアルコールっぽさもかなり強く出てきますが。ところで最近はワインやビールにもホットワインとかホットビールと言うようなものもあります。あれも温度によって濃淡をつけるためにやっているんでしょうか?」

所長J「あとで詳しく説明するけど、渋味や酸味を特徴とするワインやあるいは苦味を特徴とするビールは、温度を上げたからと言って味が濃くなるということはあまりないんだ。むしろ酒自体の特徴となる味が薄れたりするんだよ。」

助手♂「そうなんですか?だからワインやビールでは酒を温めるというのが習慣として根付かなかったんですかね・・・。」

所長J「逆にワインやビールの場合はしっかり冷やしてサーブするというのが大事になってくるけど、これらの酒は冷やした時の方が酒の特徴が良く出てくるからね。それはさておき、一方で食べ物の方の濃淡だけれども、これは『原材料』と『調理法』と『調味料』でだいたい決まってくる。次のセクションでもう少し突っ込んで考えてみようか。」

 

■食べ物の「味の濃淡」

助手♂「『原材料』は肉なのか野菜なのか魚なのかと言うようなものですか?例えば肉にしても部位によってもだいぶ味が違いますよね?」

所長J「そうだなぁ・・・鶏でも胸肉はあっさりしているのに対してモモ肉はこってりしていて味が濃い。同じ唐揚げという料理を作っても肉の部位によってだいぶ食べた時の印象は異なるよね。」

助手♂「『原材料』には旬と言う要素もありますよね。鰹とかは夏に取れる初鰹はあっさりしているのに対して、秋の戻り鰹は脂がのっているので味が濃くなります。」

所長J「それをどのような味付けで食べるのか、つまり『調味料』によってもだいぶ印象は異なる。単純に砂糖や塩をたくさん使えば、甘味や塩味が増えるわけなので、濃淡は増える。また同じような『原材料』や『調味料』を使っていても、『調理法』によってもかなり味の感じ方は違ってくる」

助手♂「鰹は刺身でそのまま食べても良いですし、タタキにしても良いですが、タタキすればちょっとした香ばしさがついて、身の余分な水分が減ったぶん味が濃厚になるますよね。」

所長J「その場合、合わせる日本酒の方も少し濃い物を合わせなきゃならん、ここで言いたいのはそういう言うことだ。」

助手♂「しかし『原材料』『調味料』『調理法』の組み合わせなんて千差万別ですよね。スカウターでもあって、食べ物の味の濃淡が数値化されれば簡単ですが・・・。」

所長J「まぁ一概にこれが正解と言うのはないんだけど、数値化と言う意味では『カロリー』は濃淡の目安になるんじゃないかなと思う。」

カロリーと味の濃淡

助手♂「ん?カロリーですか・・・?」

所長J「うん、要はカロリーが高い料理というのは栄養がたくさんあるわけだけど、栄養がたくさんあるということは料理の味としても濃いことが想定されるわけだよ。その逆もまたしかりで、カロリーが低い料理は味も淡いことが想定される。もちろん例外はいくらでもあるけども。」

助手♂「うーん、なんとなくは分かります。なんとなくは。」

所長J「これは適当な仮説だけど、一人前でカロリー200kcalまでぐらいの料理なら純米大吟醸、200~500kcalぐらいまでなら純米吟醸、500kcalを超えるようだと純米酒や本醸造、場合によっては生酛や山廃なんかを合わせた方が良いんじゃないかな?もう一回言うけど、これは適当な数値だからちゃんと検証しないといけないけれどもね。」

 

■酒の「味の濃淡」

所長J「食べ物の濃淡以上に酒の濃淡と言うのは難しい。さっき『200kcalまでぐらいの料理なら純米大吟醸、200~500kcalぐらいまでなら純米吟醸』とか言ったけど、使ってる米や製法によって同じ純米大吟醸でも味の濃淡はだいぶ違うからね。」

助手♂「最近酒米の雄町がふくよかな味わいで人気になっているようですが、玉川の雄町純米吟醸とかは『純米酒ですかこれ?えっ吟醸なの?』みたいな味がしますし。」

所長J「玉川で言えば、山廃の純米大吟醸とか、とうてい純米大吟醸とは思えないグーパンチな味がしたような気がする。それはともかくとして原材料と製法については、購入して目の前に既に酒が用意されている状況でどうにかできるファクターではないよね。一方で温度は購入した後で飲む人がある程度コントロールできる要素と言うことが出来よう。にもかかわらず、だいたい居酒屋でも家庭でも、酒と言えば冷蔵庫から出されたものをそのまま飲んでいるよね?」

助手♂「ものすごい親切な店で、一度だけ『何度ぐらいでお出ししますか?』と聞かれたことはありますけど・・・『日本酒=冷で飲むもの』というのが飲食店でも定着しちゃってますね。熱燗は中味はなんだか分からないけど『熱燗』というメニューになってますし。」

所長J「まったく、あれ中味はなんなんだろうなぁ?」

助手♂「ものすごく『パック酒』っぽい味がしますけど。」

所長J「だから熱燗に対するイメージが良くないのかもしれないな。けれども、日本酒という酒の味の本質に立ち返れば、それが供される温度についてはもっと敏感になっても良いぐらいだと思うんだわ。まぁちょっとこれを見てみてくれ。」

温度と味の感じ方

助手♂「このグラフはなんですか?」

所長J「これは温度別に人間の舌が感じる味の強さをグラフにしたものだよ。」

助手♂「ほほぅ、なるほど。三つ折れ線グラフがありますね。」

所長J「そう。味にはいろんな要素があるけど『①甘味や旨味のグループ(オレンジ)』と『②苦味や渋味や塩味(ブルー)』のグループと『③酸味(水色)』の三種類がある。前に日本酒の味の特徴は『①甘味や旨味』だという話をしたけれども、甘味や旨味はだいたい人肌と同じ35℃ぐらいになった時に最も強くその味を感じることができると言われているんだ。」

助手♂「いわゆる『人肌燗』・・・名前的にはそのままなんですが・・・とか『日向燗』とか『ぬる燗』と言われている温度帯ですね。」

所長J「そうそう。居酒屋だと冷は10℃以下で、熱燗は熱燗と言いつつ55℃ぐらい(実際は『飛切燗』)なので、『人肌燗』『日向燗』『ぬる燗』はいつもはスルーされている温度帯なんだけれども、その温度帯が実は最も甘味や旨味がたかまる温度帯なのね。」

助手♂「そうなんですね、『人肌燗』なんて中途半端な温度で注文したことなんて、これまでありませんでしたよ。」

所長J「一回だけあるけど、そう頼んでも『熱燗』で出てきちゃうんだなこれが、店が悪かったのかもしれないけど。というのが『①甘味・旨味』の特徴。」

 

■濃淡と濃淡のペアリング

助手♂「つまり、どんな酒でも温度を35℃にすれば一番味が強くなる・・・ということですか?」

所長J「日本酒の主な味が『①甘味・旨味』であれば、だいたいそうだということが出来る。けれども、あながちそうでもないというのを、この間この研究所では体験したんだよ。」

助手♂「そうでしたっけ?」

所長J「そう、あれは忘れもしない、わたしが二度死んだ14日目の話」

  [14日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 実食編②はこちらから

所長J「あの日、冷蔵庫から出した秋鹿は、ずっと食卓の上に放置しておいただろ?」

助手♂「そうでした。」

所長J「食卓に放置したせいで酒の温度がぬるくなっててしまったので、スペアリブを食べた時と煮込みハンバーグを食べた時では秋鹿の印象がだいぶ違ったと思うんだ。あの時秋鹿を飲んで狙っていた効果は秋鹿の『渋味』や『苦味』で肉の『旨味』を対比効果で引き立てることだったんだけど。実はさっきのグラフに立ち返ると『②苦味や渋味や塩味(ブルー)』と言うのは温度が上がれば上がるほど弱く感じられる味の要素なんだ。」

助手♂「あれ?あの時は煮込みハンバーグの味が濃すぎるので失敗だったという話じゃなかったでしたっけ?」

所長J「それも敗因の一つではあるのだけれど、もしか秋鹿がキンキンに冷えていれば、スペアリブの時とおなじような肉の味の輪郭をくっきりはっきりさせることができてかもしれないんだよ。」なぜ我々は負けたか

所長J「秋鹿も煮込みハンバーグも全部飲み切っちゃったし食べきっちゃったからいまさら検証のしようはない。けど今回のこの理論を叩き込んだからには、発揮したい相互効果によって、温度を上下させるというテクニックが使えるようになったわけだ。というわけで、前回のリベンジマッチをしてみようという話なのだよ、今回の企画は。」

※ちなみに『③酸味』は温度による味の感じ方の変化がないといわれているので、冷でも熱燗でも感じ方は同じです。ただし酒の中の他の要素(甘味・旨味・塩味・渋味・苦味)の感じ方がかわるのでそれに影響されて強く酸を感じたり、弱く感じたりすることがあります

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[18日目]日本酒ペアリング③ 味の濃淡と相互効果 企画編

■あじの そうごこうかの げんかい

じょしゅ♂「おお しょちょうJよ しんでしまうとは なさけない」

しょちょうJ「・・・はっ!ここは いったい・・・」 ⇒くわしくは 14にちめ をさんしょう

じょしゅ♂「そなたに もういちど きかいを あたえよう。 ふたたび このようなことが ないようにな。 では ゆけ! しょちょうJよ!」

しょちょうJ「はい・・・」

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

所長J「って、おい!」

助手♂「あれ漢字にもどった!」

所長J「突っ込むポイントはそこじゃない。えーと・・・

所長J「私はなんで死んでいたんだ?」

助手♂「覚えていないのですか?あなたは助手♀に殺されたのです・・・あんなペアリングの失敗をしたら、そりゃ助手♀も怒りますよ・・・」

所長J「ペアリングの失敗?なんだっけ?」

助手♂「『なんだっけ?』じゃないですよ。作った料理は酒にあわないわ、挙句の果てに端から『ペアリングの効果は期待していなかった』とか。」

所長J「ううっ、頭が痛い・・・・・・・・はっ!・・・・・・なんとなく思い出してきたぞ。」

味の相互効果

所長J「・・・あれは・・・事故だ。」

助手♂「(うそつくな。)」

所長J「味の相互効果に基づけば、きちんと旨味同士の『相乗効果』が生まれるはずだったんだ。だけど一つペアリングの時に考えなきゃいけないことを忘れていたんだよ。」

助手♂「忘れていた?相互効果については10日目の理論編できっちりロジックを詰めていたはず。一体何を忘れていたというんです?」

⇒10日目の理論編はこちらから

 

敗北を抱きしめて

所長J「『味の強さ』を合わせることをすっかり忘れていたんだよ。」

助手♂「『味の強さ』??そういえばいつもチャートの下の方に『味の強さ(主観)』って書いてありましたけども・・・あれですか?」

所長J「・・・そう、頭の片隅で気にはしていたから、いつもチャートの下の方に書いていたんだ。最初に説明をするのを忘れていたんだけど・・・」

所長J「味の強さこそが、相互効果が機能するための重要な鍵だったんだよ!」

助手♂「な、なんだってー!」

助手♂「・・・って、いや、待ってください。そもそも『味の強さ』って何なんですか?それから『味の強さ』が『相互効果の鍵』って・・・何を言っているのかさっぱりわかりません。」

所長J「そうかそうか、つまり君はそういう奴なんだな。」

助手♂「黙れ、エーミール!・・・ちゃんと説明してください、ちゃんと。」

 

■『味の強さ』、すなわち『味の濃淡』

所長J「『味の強さ』というのは、つまるところ『味の濃淡』、濃さと薄さのこと。酒と食べ物の二つの味の要素の間に濃淡のアンバランスがあると、相互効果はちゃんと機能しないんだ。」

相互効果と濃淡

所長J「『スイカに塩』、これは典型的な『対比効果』の例であって、この研究所でも何回も紹介してきた。」

助手♂「スイカにしょっぱい塩をふると、よりスイカの甘さを強く感じることができる、というあれですね。」

所長J「いかにも。ただし、塩についても、ただ闇雲にかければ良いってもんじゃない。かけ過ぎれば『ただしょっぱいだけ』で『対比効果』なんて打ち消されてしまうんだ。」

助手♂「なるほど・・・って当たり前と言えば当たり前ですね。そりゃ塩かけ過ぎたら、スイカだってただしょっぱいだけでしょう。しかしですね、具体的に、じゃ、スイカには塩何グラムをかけたら『対比効果』が生まれるというんです?」

所長J「だいたい0.3~0.4グラムぐらいじゃないか?」

助手♂「え?なんか超具体的なんですけど、その根拠は?」

所長J「家庭で使われている塩のケースの一振りはだいたい0.08~0.1グラム程度だ。スイカにはだいたい四振りぐらいするから、0.3~0.4グラムぐらいだと推定される。」

助手♂「なるほど、たしかに感覚としてはそんなもものような気がしますが、厳密に言って、それがベストな塩の量かというのもわからないですね。」

所長J「そうなんだ。『スイカと塩』なんて単純なペアリングでも、ベストな塩の量を厳密に言うのは難しい。もっと複雑なら料理ならなおさら難しい。だけどやはりペアリングを考えるときに『味の濃淡』というものを考えないわけにはいかない。『味の濃淡』はペアリングの『第二の柱』なんだ。

助手♂「『第二の柱』・・・?」

 

■ペアリングのアナザーディメンション

助手♂「『味の相互効果』だけがペアリングの理論じゃないんですか?」

所長J「んだんだ。人が、食べたものを『おいしい』と感じるか感じないかを決定するのは①甘味・苦味・塩味などの味の要素とその相互効果だけではないよ。酒も食べ物のも、もっと複雑な要因によって感じられる『おいしさ』は左右されるし、両者をペアリングしたときでも同じことが言えると思う。」

助手♂「そうなんですね。結構前回の肉料理のペアリングで『ペアリングって奥が深い』と思ったのですが、まだまだ考えんきゃならないことがあるんですね。」

所長J「ああ。ステップで言うなら、『①味』の攻略は金牛宮を攻略した程度。酒と料理のペアリングというサンクチュアリを攻略するには、まだまだ越えなければならないものがたくさんあるのだよ。」

双子宮

助手♂「となると我々はまだクロコダインを倒した程度と言うことですか。次の双子宮では・・・」

所長J「第二の理論の柱である『濃淡』を攻略するとこういうことになる。しかしこの『②濃淡』というのがまさに曲者で、まさにアナザーディメンションなのだよ。それとな、金牛宮にいたのは確かにおっさんだが、クロコダインじゃなくてアルデバランだから。それはともかく、『②濃淡』がいかに曲者かについては、次の理論編で考えてみようか。」

 

[19日目]日本酒ペアリング③ 味の濃淡と相互効果 理論編に続く

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[Day17]Pairing Sake and Cigar: “KATSUYAMA THE BRAVE SMOKER”

[17日目]日本酒ペアリング コラム 葉巻と日本酒のペアリング

Link to: Paring Sake and Food laboratory: Samurai sake “KATSUYAMA” and Meat dishes

 

・Conditions of liquor to meet the cigar  葉巻に合う酒の条件

When you enjoy a Cigar, what kinds of alcohol drink you usually choose? Cognac? Armagnac? Calvados? Single malt whiskey? You have many choices.

葉巻を楽しむ際に、君はどんな酒をいつも選ぶだろうか?コニャック?アルマニャック?カルヴァドス?シングルモルト?まぁいろんな選択肢があるだろう。

Monymusk Bristol Cl Rum

Monymusk Bristol Cl Rum

Rum can be a one of choice. Also from the view point of “region pairing”, Rum, which is produced in Latin America, can become the best partner of the cigar.

ラムと言うのも一つの選択肢だ。『土地ペアリング』という観点からも、中南米で生産されるラムは葉巻のベストパートナーになりうるものである。

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My Amaretto and Cigar

Although not related to the “region pairing” , I love to pair Amaretto and cigars. It is because I’m a beginner at cigar, then sometimes I feel bitterness or pungency from Cigar. Matured Cigar lover well smoke and avoid them, however, at the final stage, when the length of the cigar is shortened, inevitably degree of bitterness and pungency are increased.

Then, here we can say, “Sweetness” is one important condition when you try to pair Cigar and liquor. When you drink Sweet liquor (Sweet beverage can not meet the Cigar. “Strength” of alcohol is also another important factor for pairing in terms of balance control.)  Sweetness of liquor reset bad taste of Cigar and we can enjoy Cigar to the last.

 

『土地ペアリング』とは関係ないが、私(所長J)はアマレットとシガーをぺリングすることが好きだ。なぜかって?私が葉巻は初心者なので、まれに上手く吸えずに葉巻から苦味や辛味を感じることがあるからだ。熟練した葉巻愛好家たちは、上手に吸うことでそうした苦味や辛味をうまく回避している。とはいえ葉巻の終わりの方になると、葉巻の長さも短くなり、感じる苦味や辛味の程度も増してくるというのが必然だ。

ということもあり、おそらくは『甘味』というのが、葉巻と酒をペアリングする際のきわめて重要な要素だと言うことができるだろう。甘い酒を飲む時(甘いジュースは葉巻に合わせることが出来ない。アルコールが持つ「強さ」もまた葉巻とのバランスと言う観点で、ペアリングする際の重要な要素となる。)  酒の甘さが葉巻の嫌な部分をリセットしてくれる。こうして我々は葉巻を最後まで楽しむことが出来るというわけだ。

 

Japanese Sake, new paring partner of Cigar 日本酒、葉巻の新たなるペアリングパートナー

For a long time Dry(Karakuchi) type Sake had dominated trend of Sake taste in Japan. Karakuchi sake, which we usually pair with delicate Japanese dishes like Sushi, cannot be a partner of Cigar. But Sake, which is made from rice, originally had sweet elements. To make Karakuchi sake, most of them are just consumed during alcohol content generation process.Yeast generate alcohol content from sugar content.

Recently, this Karakuchi taste trend had reconsidered and Sweet(Amakuchi) type of Sake is produced at some Sake brewery. The Katsu-Yama brewery, who produce the sweetest sake (as long as I know), discover possibility of paring Sweet Japanese sake and Cigar and finally developed “Sake for Cigar” named  “Samurai Sake THE BRAVE SMOKER”.

長きにわたり、ドライで辛口な日本酒と言うのが、日本では流行っていた。辛口の酒、それは我々が通常寿司のようなデリケートな食事に合わせるものだが、こういう酒は葉巻に合わせるのが難しい。しかし日本酒と言うのは、そもそも米から作られているわけであり、元来甘味の要素を持ち合わせているものなのだ。辛口の酒を造るために、そうした甘味はアルコール分を生成するプロセスの中でほとんど消費されてしまう。酵母が糖分からアルコール分を生み出しているのだ。

近年、こうした辛口愛好のトレンドは再考されつつあり、甘口タイプの日本酒も酒蔵によって生産されるようになっている。
勝山酒造は私が知る限りで最も甘い日本酒を作る酒蔵だが、彼らは甘い日本酒と葉巻をペアリングする可能性を発掘し、ついには『ザ・ブレイブスモーカー』と言う名の、『葉巻のための日本酒』を開発した。

Samurai Sake "The Brave Smoker"

Samurai Sake “The Brave Smoker”

 

“The Brave Smoker” is brewed to celebrate the 400th Anniversary of exchanges between Cuba & Japan.

ブレイブ・スモーカーはキューバと日本の交流400周年を記念して醸造された日本酒である。

Backside label of bottle

Backside label of bottle

 

3 types of Katsu-Yama Sake are blended, considering best paring with Cigar: 2011 vintage, 2008 vintage and 2013 vintage. Taste of it is at first Sweet and I can feel Aged sake taste. I feel taste of Skewered rice dumplings in a sweet soy glaze. Master of bar mentioned “It is Iburigakko” which is smoked sweet daikon pickles.

葉巻とのペアリングを考慮して、この酒では三つの種類の原酒がブレンドされている。2011年のヴィンテージ、2008年のヴィンテージ、2013年のヴィンテージである。味はまず甘く、古酒のようなテイストを感じることもできる。私はみたらし団子のような味を感じたし、バーのマスターはそれを「いぶりがっこのようだと表現した。

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How is paring with Cigar? Finish of The Brave Smoker is so long compared with other Sake that Sweet aroma of Sake remains in the mouse for more than 30 second. This sweet aroma is well merged with smoke of Cigar in the mouse.

If sake is Karakuchi one, smoke aroma of cigar is swiped completely. Even though you want to bathe in the afterglow of long lasting finish of Cigar, suddenly, as it were, you are splashed with cold water.

It is very difficult to say that Katsu-Yama The Brave Smoker is the best partner of Cigar, because sometimes I want to pair Cognac,  Armagnac, Calvados, or other Single malt whiskey with Cigar. It depends. But it is clear that The Brave Smoker is currently only and the best “sake” partner of Cigar. I would like to express my great respect and gratitude to Katsu-Yama for the brave contributions he has made to the expansion of paring possibility.

ペアリングという意味だとどうだろうか?ブレイブ・スモーカーのフィニッシュは他の酒と比べても非常に長く、口の中で30秒以上も甘い日本酒の香りが残る。そこに葉巻の煙を流し込むと、甘い香りと煙が口の中で良く交じり合う。

もしも酒が辛口のものだったとしたら、葉巻の煙のアロマは完全に一掃されてしまうことだろう。もしも葉巻の余韻をゆっくりと楽しみたいと思っていたとしても、突然に冷水をかけられたかのように、その余韻は断ち切られる。

コニャックやアルマニャックやカルヴァドス、あるいはシングルモルトウイスキーなど、葉巻に合わせたい酒はたくさんある。だから勝山のブレイブ・スモーカーが葉巻に最も合う酒だというのは難しい面もある。また葉巻にもさまざまな味があるので、あわせる酒は時と場合によるというのが実態だろう。しかしはっきりといえることは、葉巻に日本酒を合わせに行くということ自体が、世界で最初に行われた試みであり、葉巻にとってブレイブ・スモーカーが今のところ唯一の「日本酒のベストパートナー」だということである。日本酒のペアリングの可能性を広げる新たな「勇気ある試み」には、敬意を表する次第である。

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Link to Sake Pairing Laboratory

助手♂「なんで急に英語なんですか?」

所長J「前回の記事で『sake pairingはあり』だが、『sake marriageはなし』という話をしたが、そんなこと言ってもお前のサイトには英語の記事なんかないじゃないかといわれたら、

癪なので。」

 

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[16日目]日本酒ペアリング コラム ~マリアージュ vs ペアリング 仁義なき戦い~

 

■やっぱり『マリアージュ』なのでは?
助手♀「ふむー・・・」
所長J「どうしたんだ?考え込んだりして?」
助手♀「この研究所の名前なんですが、敢えて言います、やっぱり『日本酒 de マリアージュラボ』の方が、世の中のトレンドにはマッチしているんじゃないですか?」
所長J「(ピキッ!)」
助手♀「いや、ほら雑誌の特集とか見ても、『ペアリング』って言葉はあまり出てきませんよ。『マリアージュ』の方がよいのでは?」
所長J「だから独身の前で、その言葉を使うのはやめろといっているじゃないか?」
助手♀「これは失礼しました。ですが所長、やっぱりそれが理由でこの研究所は『ペアリングラボ』にしているんですか?」

所長J「え?違うよ?何言ってんの?」

 

■ビールの世界のペアリングとマリアージュ
助手♀「え?いや、ちょっと待ってください。だって確かに第10日目のラボの時にそういっていたじゃないですか?
所長J「言われてみればそんなようなことを言った記憶もあるけれども、それは本当の理由じゃないよ。」
助手♀「そうだったんですか?」
所長J「んだんだ、よーぐきげ孫作。」
助手♀「(まごさく???)」
所長J「まず私はビールの世界で一般的にされれていることを日本酒の世界に持ち込んでいるだけなんだ。んで、実はビールの世界ではあまり『マリアージュ』という言葉は使われていない。よって私は『ペアリング』と言う言葉を使っているんだよ。ほら、私が持ってる本もタイトルは『Pairing』になっているし。」

 

ビールの世界では「Pairing」の方がメジャー?

ビールの世界では「Pairing」の方がメジャー?

助手♀「これは洋書ですか?」
所長J「私が持っている二冊のビール本は洋書だね。日本には理論的な『ペアリング』研究の本はほとんどない。『ビールに合うおつまみ』をたくさん紹介した本とかはあるけど。しかしね、そもそもビールと言うのは100を越えるスタイルがあると言われているんだ。それぞれのスタイルは甘さや苦さや酸っぱさが異なるので、オールマイティに『ビール合うおつまみ』なんていうのは、本来的にはありえない話なんだよ。」

 

■日本酒マリアージュと偽装結婚
助手♀「なるほどそうなんですね(まずい!このままだとまたいつものようにビールの話に引きずりこまれる)。あ、でも、そうだ、『Wine』で検索すると、結構『Marriage』でヒットするようですが、ほら見てみてください。」
Wine Marriageで検索すると食べ物とのマリアージュのページもたくさんヒットする

Wine Marriageで検索すると食べ物とのマリアージュのページもたくさんヒットする

所長J「確かに・・・なるほど、そういうことか!日本酒で『マリアージュ』という言葉を使う人が多いのは、私と違ってビールじゃなくて、ワインから日本酒に流れてくる人がたくさんいるせいかもしれないね。」
助手♀利き酒師とソムリエの両方の免許を持っている人はたくさん居る見たいです。」
所長J「まぁ私はどっちも持っていないわけだが・・・一応ビールにもビアテイスターとかの資格はあるけど、利き酒師やソムリエに比べたらマイナーな資格だよな、おい。まぁとりあえずそういう流れがあると言うことはなんとなく分かった・・・分かったが・・・」

助手♀「?」

所長J「じゃあついでになんだけど、試しに『Sake』『Marriage』で検索してみたらどうだい?」
助手♀「『Sake』『Marriage』・・・ですか?何件ぐらいヒットするのかなぁ・・・って、あれ?」
もしかして『偽装結婚』・・・違うわい!

もしかして『偽装結婚』!

助手♀「『Fake Marriage』に誘導された?」

所長J「はい、それが本当の答えだよ。」

助手♀「!?」

所長J「・・・私としては『Fake Marriage』、つまり英語で検索した時に、Google先生が『偽装結婚』に誘導するような言葉をあまり使いたくないんだよ。いや、もちろん『日本酒』『マリアージュ』でも意味は通じる正しい言葉だから、それを使おうとすることを止めるつもりは一切ないんだけど。」

助手♀「・・・・・・・・・」

所長J「なにがなんでも『Sake』『Marriage』と言う言葉をグローバルに普及・浸透させるんだと言う気概があるなら、今すぐこのラボの名前は『日本酒 de マリアージュラボ』に変えるし、英語版のサイト(今はないけど)のカテゴリーも『Marriage Laboratory of Sake and Food』に変える。でもそうじゃないなら長いもの(『ペアリング』『Pairing』)に巻かれておいたほうが良い訳だよ。少なくとも『Sake』『Pairing』ではすでに寿司に合う日本酒とかまっとうな検索結果が返ってくるわけだし。
助手♀「なるほどそういうことですか。所長にはマリアージュを普及させるような気概は・・・?」
所長J「ない。世界の人は『Sake』『Pairing』で検索するが、日本の人は『日本酒』『マリアージュ』で検索するというようなガラパゴスは良くないんじゃないかな?同じ概念を指す言葉を二個も三個も定義したり、1つの言葉が複数の意味を持つのは確実にコミュニケーションのロスに繋がるわけだし・・・」
言葉の不一致がもたらすコミュニケーションロス

むかし所長Jと助手♂の間で本当にあったアホな会話

所長J「敢えて『マリアージュ』という言葉を使わなければならない理由が特にないなら、既にある標準化された言葉の使い方に乗っかっておく方が日本酒は世界に打って出やすいんじゃないかな?いや、もちろん『マリアージュという言葉で打って出る』と言うのも戦略の一つだろうけど、外国における言葉のルールを塗り替えるのには相当な労力が必要になる・・・日本酒には他にやるべきことがたくさんある様に私には思えるんだ。」 

 

■それでも敢えて『マリアージュ』

所長J「それでも『日本酒』『マリアージュ』という言葉を使いたいのなら、第13日目の実食編でやったような『口内調味』と同じ意味で使うなら、それには意味があると私は思う。
助手♀「『口内調味』ってなんでしたっけ?」
所長J「スペアリブやハンバーグを食べてから、口にそれらが残っているうちに酒を流し込んで口の中で咀嚼してぐちゃぐたに混ぜ合わせる方法だよ。」
助手♀「そうでした。忘れてました。しかしなんでまた、そのぐちゃぐちゃの状態を『マリアージュ』と?」
所長J「いや、実際の結婚なんて男と女のぐちゃぐちゃした状態が常であって、『マリアージュ』って言葉からイメージされるような美しくきれいなもんじゃないよ。それでも人が結婚するのは、そのぐちゃぐちゃした状態から1人では得られないような喜びや楽しさを得られるからだろう?そう考えると『マリアージュ』は『口内調味』でやろうとしていることを説明するのに、丁度良い言葉だと思わないかい?」
助手♀「なるほど、そういう考えになるんですか。確かにそうかもしれませんが・・・」

助手♀「それを独身のあなたが言いますかふつう?」

[15日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 反省会編

第2弾「独眼竜に俺はなる!」 の「初回:企画編」から読む場合はこちらから

[14日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 実食編②はこちら

■というわけで、結果レポートと言う名の反省会

日本酒ペアリング1

所長J「長らく続いてきた第2回のペアリングラボも今回で最終回。まずなんですが、企画編が投稿されたのが9月13日ですから、足掛け2か月。ぶっちゃけ、長いので次回はもう少しどこかを縮めないとなぁ・・・と反省している次第です。しかしどこを削るのがよいのでしょうか?」

所長J「いきなり結論の実食編だけやってもおもしろくないですしねぇ・・・私は調理編をまとめるのが一番かったるかったんですが・・・たまたま仕事が忙しかったのと重なったというのもあるのですが。まぁいいや、それはまた別途考える。」

 

■ペアリングの初期仮説

日本酒ペアリング2

二つの仮説を持って今回のペアリングを試みました

 

所長J「『肉と言えば、ビールじゃない、赤ワインでもない、これからは日本酒だ』というわけで、肉料理が日本酒に合うとしたらどういう組み合わせが考えられるかを、相互効果のチャートを見ながら考えました。肉の調理法によっていかようにも風味(Flavor)は変えられますが、うちの研究所はまだそういう高度な風味のペアリングを試す段階ではありません(それは次の次のステップで考えてはいる)。」

所長J「なので、素直に肉の旨味と日本酒をマリアージュ(って言葉を使えって、SEO担当者に念を押されたのだが、この言葉を使うたびに私のソウルジェムは濁っていく気がする・・・)させる方法を考えました。」

所長J「基本のチャートに立ち戻ると仮説として考えられる方法は2つ。『①旨味のある日本酒を肉の旨味に掛け合わせる(相乗効果)』か『②塩見・苦味・渋味のある日本酒で肉の旨味を際立たせる(対比効果)』かです。②については、しょっぱい日本酒というのはないので、『苦味・渋味』のある日本酒を探すということになります。」

 

■仮説に合った酒を選ぶ

日本酒ペアリング3

勝山は飲んだことがあるので、ほぼ想定通りの味でした。◎は想定通りの味。○は少し想定と違ってた味。

所長J「①の仮説用に用意したのが『勝山 䴇 Sapphire Label』。単体で味わうとトロットしたアミノ酸の旨味と米の甘味が感じられます。香りはフレッシュなメロンと言うよりは、冷蔵庫で1週間ほど寝かせて熟成されたメロンのような割と甘ったるい感じの香りでした。単体で飲むと食前酒か食後酒といった趣きですが、肉と合わせると一気に違った側面を見せて『豹変』します。」

 

日本酒ペアリング4

◎は想定通りの味。△はだいぶ想定と違ってた味。

所長J「一方②の仮説用の酒ですが、そもそも米をどう加工したって渋くはならないし、パッと思いつく酒がありませんでした。が、流石『酒屋は酒のプロ』と言うことで、素直に『こんな感じの』と頼んだら出てきたのが『秋鹿 純米吟醸 倉垣村 ひやおろし』。」

所長J「その味わいについて、どこのサイトにも『山田錦特有の豊かな味わい』と書いてありますが、まずこのお酒について触れるべきは独特の苦みと渋味であって、それには触れずに『山田錦特有の豊かな味わい』って書くのは『日本酒の説明としてどうなのよ』と私は思ってしまうわけです。それはともかくとして・・・」

 

■ペアリングの仮説と結果1/3(スペアリブ)

日本酒ペアリング5

所長J「ペアリングするのは肉料理だったら、例えば単純にカルビの塩焼きとかでも良いわけだが、家でも作りそうなものをピックアップしてみた。スペアリブは甘く煮込んだ肉料理としてピックアップした。」

所長J「甘く煮込んだ肉料理なら豚の角煮とかでも良かった気がするが、なんか素直に和食に行くのも面白くないと思い、スペアリブ。(スペアリブまではそういう遊び心のある選択をしていて正解だった・・・わけだが・・・)。」

 

日本酒ペアリング6

所長J「結論から言うと、この勝山&秋鹿×スペアリブの組み合わせが、今回のペアリングの中では一番よかった。もともと仮説(Before)として引いていた相互効果の線も妥当性が確認できた。」

所長J「まず①勝山の旨味と料理の旨味を口内調味すると、だれもが感じられるレベルで、旨味の『相乗効果』を得ることが出来た。また勝山に関しては、②おそらくその甘さを殺さないためにも、塩で味付けした肉料理よりも甘味のある肉料理の方が合うかと思われる。③食べ物の熱が加わることで、メロンの香りが一気に高まったのは、当初想定していない効果であった。咀嚼する度に旨味が増していく。ドロドロになるほどにおいしくなる。まさにマリアージュである(またソウルジェムが濁る)。」

所長J「一方の秋鹿。秋鹿は④渋味や苦味がスペアリブを引きたてるだけ引きたてて、秋鹿自信の特徴である④渋味や苦味や⑤酸味はスペアリブの甘味に抑制されたのかスッと消えていった。旨味をピュアに感じることができたという意味ではこれもGood Pairingだったということができるだろう。」

 

■ペアリングの仮説と結果2/3(煮込みハンバーグ)日本酒ペアリング7

所長J「煮込みハンバーグは、しょっぱい肉の煮込み料理として採用した・・・はずだったのだが・・・」

 

日本酒ペアリング8

所長J「そもそもあまりしょっぱくはなかったので、味の組み合わせとしてはスペアリブと大きく変わらないものになってしまった。であれば、スペアリブと同じような相互効果が期待できる、と思いきや、確認できたのは、①勝山の旨味と合挽ミンチの旨味の『相乗効果』だけであった。」

所長J「おそらくだが、酒との相互効果が得られなかった原因は『味のペアリングミス』以上に、『味の強さ=濃淡』が酒と食べ物の間で合っていなかったことが原因ではないかと思われる。」

所長J「ただハンバーグを焼くのではなく、さらに味を濃くするために、今回は敢えてハンバーグを煮込んだ。スペアリブの時には酒と食べ物の濃淡のバランスが保てていたが、煮込んだせいでそれが崩れてしまった。結果的に勝山の旨味はハンバーグに飲みこまれ、秋鹿の渋味や苦味ではうまくハンバーグを際立たせることが出来なかった。」

 

■ペアリングの仮説と結果3/3(ラタトュイユ)

日本酒ペアリング9

 

所長J「肉料理の会なのに、ラタトュイユを最後のメニューに選択した理由は、野菜の旨味(主にはグルタミン酸)と日本酒の旨味の確認したかったからなわけだが、すでに仮説構築の段階で、相互効果の線を引くのに苦戦しているのが目に見えてわかりますねぇ、まぁやってるのは自分なんですけど。」

日本酒ペアリング10

所長J「で、結局のところラタトュイユ自身が酒を引き立てるということは『やっぱりなくて』、結果的に他のペアリングの良さを引き立てるだけの結果になりました。まぁペアリングと言うのはより合う組み合わせを見つけるだけじゃなくて、

合わない組み合わせを見つけるのもペアリングですから。」

所長J「・・・そういうわけで、助手♀、すまんかった。」

所長J「ラタトュイユはともかく、煮込みハンバーグでは『相互効果』だけでなく『濃淡』というペアリングをする上で重要な概念にたどり着くことができました。第3弾のラボでは、ここらへんをテーマとしてさらにマリアージュ(ちっ・・・)を深掘りしてみたいと思います。」

日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 完

≪日本酒≫ 勝山 特別純米 LEI SAPPHIRE LABEL 720ml

 

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[16日目]日本酒ペアリング コラム ~マリアージュ vs ペアリング 仁義なき戦い~はこちらから

 

[14日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 実食編②

[13日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 実食編①はこちら

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ペアリング実食 二回戦 v.s. 煮込みハンバーグ

助手♀「そういえば、なんで普通のハンバーグじゃなくて、煮込みハンバーグだったんですか?12日目を見ていて分かると思いますが、結構焼いてから煮込むのはめんどくさかったのですが。」

所長J「ふむ、これは次回のテーマになるのだが、『濃淡』を酒に合わせるためだよ。焼く+煮込むで味の濃さを高めた方が、今回用意した酒には合うかなぁと思って。」

助手♀「なるほど、そういう意図があったんですねぇ。そういうことならペアリングには期待しましょう。」

ハンバーグと日本酒

人数分用意しました。所長と♂と♀の3人じゃないのかって?こまけぇことはいいんだよ

所長J「さて、スペアリブも煮込みハンバーグも煮込んだ肉料理だが、一点違うところがあるとすると、スペアリブが甘いのに対して、煮込みハンバーグがだいぶしょっぱい点かな。しょっぱいのであれば、『スイカに塩』とおなじように、ハンバーグのしょっぱさが、勝山の甘さを『対比効果』で引き立ててくれる可能性が出てきます。どう影響するか、確認してみましょう。」

煮込みハンバーグと日本酒のペアリングチャート

煮込みハンバーグと日本酒のペアリングチャート

助手♀「まずは秋鹿からですね。」

助手♂「(もぐもぐ)・・・うむむ、こりゃ甘い、ハンバーグが。期待していた塩味が足りていないような・・・。ハンバーグ単体としては普通に美味しいですが・・・。」

助手♀「普通に?」

助手♂「あ、いや、『すごく・・・美味しい』です。だがしかし、ハンバーグを食べた後で日本酒を食べると、『あれ?なんで俺日本酒飲んでんの?』って感じがする。」

助手♀「前回の『茄子とトマトのオーブン焼き』の時も『これだったら日本酒じゃなくて白ワインで良いなぁ』って感じがしましたが、それと似ています。『これなら赤ワインかビールでいいんじゃないかなぁ』って感じです。」

助手♂「だな。このペアリングにはスペアリブほどの感動はないかもしれない・・・秋鹿の『切る感じ』『リセットする感じ』はいいが、煮込みハンバーグを切りきれていないような感じはします。」

助手♀「そうですね・・・・・・ちょっと、所長?ところでなんでさっきから黙っているんですか?」

所長J「えっ、あ?なるほどそっかそっか・・・よーし残念ながら秋鹿があまり合わないなら、次行ってみよう。行ってみようじゃないか。」

 

助手♂「勝山選手は・・・(もぐもぐ)メロンの香りの立ち上り方はより一層強くなった感じがします。」

所長J「きっと、ハンバーグがスペアリブよりも熱々だからだろう。」

助手♀「しかし、口内調味で咀嚼してみると・・・(もぐもぐ、ゴックン)ちょっとケチャップの味が強すぎて、やはりスペアリブほどの感動はないかもしれませんね。」

所長J「そうか?ちょっと待ってほしい・・・もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ、ゴックン・・・・・・・・・うーん、口の中でゆっくりと時間をかけて咀嚼をして、ソースが居なくなった後ぐらいになると、スペアリブの時のような旨味の重なり合いを感じるよ。」

助手♀「そうですか・・・もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・うーん、なるほど、なんとなく分かるような気がします・・・たしかに所長のおっしゃる通り・・・(ぷるぷる)おっしゃる通りなのですがっ!」

 

助手♀「つまるところ、このハンバーグ、煮込む必要はなかったと?」

 

所長J「・・・・・・・・・」

助手♂「・・・ハンバーグは『焼けば』よかったね。」

所長J「そうだね。」

助手♀「『そうだね。』じゃなーい。」

所長J「ちょっと待て、なんだそのストウブの鍋は?話せば分かる!」

助手♀「問答無用!いやー煮込むのめんどくさかった。所長、覚悟はよろしいですか?」

所長J「えっ?ちょっ、ぐぎゃー・・・『濃淡のミス』の行きつき先は・・・死・・・覚えておこう・・・ぐふっ。」

助手♂「所長!?(あ、死んだ・・・)」

助手♀「さてと、『焼いたハンバーグ』には勝山が合うことが分かったので、最後のラタトュイユに行ってみましょう。」

 

ペアリング実食 三回戦 v.s. ラタトゥイユ

彩りも美しいラタトュイユ

彩りも美しいラタトュイユ

助手♂「続いてラタトゥイユですが(ビクビク)・・・所長が残した研究ノートによると、『肉とは違う種類の旨味を重ねる』というのが趣旨だそうです。日本酒の旨味はおもに『グルタミン酸』、肉の旨味は『イノシン酸』・・・だが、野菜の旨味は酒と同じ『グルタミン酸』・・・が多い・・・とのことです。ラタトュイユとのペアリングでは酒の『グルタミン酸』と料理の『グルタミン酸』を合わせることが肉の場合とどう違うかの相性を確認したいとのことです。」

助手♀「なるほど・・・野菜の旨味ですか。そういえば鶏肉入れちゃいましたけど、大丈夫ですよね?」

助手♂「え?は、はい。大丈夫なんじゃないでしょうか?所長ノートにも『鶏肉のイノシン酸は四天王の中でも最弱・・・』って書いてありますし。」

助手♀「ですよねっ!(キラッ☆)」

ラタトュイユと日本酒のペアリングチャート

ラタトュイユと日本酒のペアリングチャート。茄子とズッキーニは効果不明のため、XXXになっています

助手♂「では早速秋鹿選手から行ってみたいと思うのですが、(もぐもぐ)秋鹿がラタトュイユに合うか合わないかで言うと・・・合わない・・・のでは?いや、ラタトュイユ自身は普通に美味いのですが・・・」

助手♀「普通に?」

助手♂「いや『とても』美味しいです。『とっても』。」

助手♀「ですよね。しかし、ペアリングとしては確かに微妙です。」

助手♂「勝山先生も・・・秋鹿選手よりは合うような気がしますが、スペアリブやハンバーグの時と比べると、面白味を欠いています。むしろ一番最初に飲んだ時の『これ食中酒じゃないなぁ』感がまた出てきてしまっているような気がする。」

助手♀「そうですね、ラタトュイユがしょっぱいので、勝山の甘味はぐっと引き立ってきますが、旨味の共演とまでは行きつかない。やはり『グルタミン酸×グルタミン酸』より、『日本酒のグルタミン酸に肉のイノシン酸を合わせた』方が良いんでしょうか?」

助手♂「そうなのかもしれない。」

助手♀「となると、結論を語るにはまだ早いかもしれませんが、結局『日本酒は肉に合うが、野菜に合わない』っていうのが、今回の結論なんでしょうか?」

所長J「今、なんて言った!?」

助手♂「おわっ!所長・・・死んだのでは?」

所長J「こんなタイミングで死んでいられるかっ!それよりさっきの台詞、もう一回いってみて。」

助手♀「さっきのって?なんでしたっけ?結局『日本酒は肉に合うが、野菜に合わない』・・・って、あれ?」

左が助手♂、右が助手♀・・・だと思う。

所長J「気づいたか・・・?」

助手♂「どういうことです?」

所長J「今あたりまえのように『日本酒は肉に合うが、野菜に合わない』と言ったが・・・今日のペアリングをして実食するまでは、おそらくまったく真逆の考えをしていたはずだ。」

助手♂「そういえば。しかし、たしかにここまで『ど真ん中の肉料理』が日本酒に合うとは思っていませんでした。スペアリブ→煮込みハンバーグ→ラタトュイユと順番に食べてみたら、秋鹿や勝山が野菜と・・・合わなくはないのですが、肉よりは合わないというのがはっきりわかりました。」

所長J「そういう意味では、最後にラタトュイユを持ってきたのは正解だったな。」

助手♂「この料理の出し方にはそういう意図があったんですね。」

助手♀「なるほど・・・つまりあれですか?」

助手♀「わたしには合わない料理を、狙って作らせたということですか?」

所長J「いや、だから、演出上そうなっているだけであって悪気は決して・・・って、だから、なんだその鍋は?」

助手♀「所長、安らかに眠ってください、滅!」

所長J「ぐぎゃーっ!」

助手♂「所長!?(あ、また死んだ・・・)」

 

助手♀「・・・というわけで、第二弾の実食編はこれまでです。あとは研究結果をレポートにまとめれば、第二弾企画はおしまいです。」

助手♂「(あと、まだ一回あるのか・・・長いなぁ)。」

 

[15日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 反省会編に続く。

 

[13日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 実食編①

[12日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 調理編はこちら

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■まずはお酒を飲んでみよう(勝山)

所長J「実食編は前回の菊姫に続いて二度目ですが、まずはペアリングに進む前に、日本酒単体での味を確認しておきましょうか?」

助手♀「そうですね、私、今回のお酒どちらも飲んだことありませんし。」

助手♂「まずは『勝山』から行ってみましょう。」

勝山 サファイア

いつものペースなら15分ぐらいで瞬殺してしまうと思われる。

助手♂「それにしても、改めて見ても日本酒らしからぬ佇まいの瓶ですね。」

所長J「最近ワイン樽仕上げの日本酒とかも多いので、こういうワインっぽい瓶は良く見かけるようになったね、そういえば。容量的には、普通の4合瓶と同じだね。」

助手♂「いつものわれわれのペースだと、瞬殺してしまいそうです。」

所長J「食べる前に全部飲んだら意味がないので、みんな少しずつ飲むように。」

助手♂「へへい。」

スライド3

助手♀「ではいただきます。・・・おおっ、日本酒っぽくない!すごい面白い味ですね。甘い。」

所長J「フレッシュな若いメロンの香り・・・というよりは、かなり熟々したメロンのような香りだな。夕張メロンやマスクメロンのような。」

助手♀「明らかなメロンですね。私はお酒が得意じゃないですが、はっきり分かる味です。あれ?裏に『エキスが沈殿するので、飲む前に振れ』って・・・」

所長J「あっ!?また忘れてた・・・」(シェイク、シェイク・・・)

助手♀「改めて振ってから飲んでみると、ちょっとフルーティーさが増したような気がしますね・・・食前酒として良さそうです・・・ってこらこら普通飲み始めてませんか、ちょっと所長!!」

所長J「おっとすまん。うますぎたのでつい・・・さて、秋鹿に移る前に言い残しがないようにしておかなくちゃだが、甘さと香り以外のこのお酒の特徴は、そう、低いアルコール度数と原料米が『ひとめぼれ』である点かな?」

助手♂「『ひとめぼれ』なんですか?『ひとめぼれ』でこれだけ美味しいお酒が出来るなら、『酒造好適米ってなんだっけ?』って気にもなりますね。」

所長J「『ひとめぼれ』を使ったこの子(サファイア)は『勝山』䴇 シリーズの中で一番安い(といいつつ、3,700円ぐらいするのだが)ランクなのだが、上のシリーズ(ルビー、エメラルド)では、『山田錦』が使われている。(飲んだことはないが)さらに味は濃いらしい。上には上があるので、一番安いのランクは『ひとめぼれ』を使ってコストを抑えているんだろう。」

助手♂「いや、一番安いと言っても相当おいしい。さらに上があるなら是非飲んでみたいですね。」

所長J「そうだな・・・研究所の経営を傾ける覚悟があればだな・・・」

勝山 䴇シリーズの最高峰Ruby Labelの気になるお値段は・・・

 

■オータム・バンビも飲んでみよう(秋鹿)

秋鹿 ひやおろし

一升瓶しか入手できませんでした。

助手♂「これは、ラベルがザ・日本酒って感じですね。」

所長J「カップ酒の秋鹿はカワイイ鹿がプリントされているのだが。

助手♀「この瓶は鹿どころか絵すらありませんし、紙に文字を書いただけですね。なんか果たし状みたいな感じで、蔵の自信が溢れているようです。」

所長J「んじゃまぁ、勝負に行ってみようか。一升あるから、これは多少飲み過ぎても大丈夫だろう。」

スライド4

助手♂「うーん、これは、なんというか、酸っぱいですね!」

所長J「前回の菊姫もそれなりに酸っぱかったが、秋鹿もなかなかどうして。」

助手♀「そしてうーん、私よく分からないのですが、これが『山田錦特有の豊かな味わい』なんですか?」

所長J「どこの通販サイトのレビューを見てもそう書いてあるので、仕方なくそうスライドにも書いておいたのだが、わたしもよくわからん。」

所長J「というか、今後うちの研究所での酒のレビューでその『山田錦の豊かな味わい』って表現は禁止な。その言葉では何も説明したことにならないってことがよくわかったから。」

助手♀「『山田錦特有の豊かな味わい』と聞いたら、炊いたお米的なふくらみを想像しますけど、秋鹿はそういう感じではないですね。」

所長J「そういうふわっとした旨味はないね。まぁ端からそういう味を期待していたわけじゃないので、これからのペアリングという意味ではそれで何の問題もないんだけど。」

助手♂「ペアリングする上での秋鹿の狙いは『渋味』と『苦味』と言うことでしたが、たしかにこれ渋柿を食べた時のような渋味はあります。勝山とは対極的です。いやでも、これはこれで美味しい。いつまでも飲んでいられそうなのは、どちらかというと秋鹿の方かもしれない。」

所長J「上司に飲まされるなら、私も秋鹿の方が良いかも。癖がない。菊姫よりは酸っぱいが、癖がないので、飲みやすい。きれいな酸ってこういうことかもしれない。」

助手♂「女子に飲まされるなら、勝山の方が良いかもしれないですが。ドイツのアイスワイン好きの女子とかなら、断然勝山がおすすめですね。」

所長J「ふむ。しかし、あれだな。やたら甘い勝山といい、やたら渋くて酸っぱい秋鹿と言い、これ、どっちもシェフなおみ好みの味じゃないな、たぶん。」

助手♀「まぁ秋鹿は残りそうだから、後で見つけたら飲ませてみたらいいんじゃないですか?」

所長J「そうだな。さて、酒の味は確認できたので、そろそろ、あれ行ってみようか。さて二つとも、どう変わってくれるかな?」

 

■ペアリング実食 一回戦 v.s. スペアリブ

IMGP4755

所長J「(我ながらうまくできたなぁ・・・)」

助手♂「たれとご飯だけで、満足できそうです。」

スライド6

 

所長J「どちらから行こうか・・・順番逆になっちゃうけど、下の秋鹿から行ってみようか。」

助手♂「じゃ注いでおきます。」

所長J「秋鹿は『対比効果』狙いなので、①まずは肉だけで食べてみます。次に②秋鹿の苦味・渋みが旨味を引き立てるはずなので、先に秋鹿を飲んでから、肉を食べてみましょう。それで味の変化を確かめます。」

助手♂「・・・どれどれ、うーん!あ、なんか秋鹿が飲みやすくなったような?」

助手♀「そうですね。秋鹿単体だと、ちょっと酸っぱさや苦味が合って、私、苦手な感じでしたが、不思議、それがスッと気にならなくなりました。」

所長J「うーん、たしかに。なんだか秋鹿が水のようにスッと消えて行って、肉の輪郭がものすごくはっきりと出てくるような気がする。」

助手♀「まさに『対比効果』ですね。」

所長J「『まさに』だな。秋鹿の酸味が消えたのはスペアリブの砂糖・蜂蜜の甘味の『抑制効果』だわな。」

助手♂「秋鹿はスペアリブを引き立てて、自分は裏に隠れてしまう。だけど、そのおかげでいい感じに『リセット』されるので、肉も酒も何倍でもイケてしまいそうです」

所長J「『切る』感じだね。うーん・・・・・・・・・・・・」

助手♀「どうしたんですか、所長?」

所長J「こんなに上手く行くとは思わなかったので、ちょっと驚いた。しかも、この変化は誰でもわかるレベルだな。こうなると俄然勝山にも期待したくなるが・・・どうだろう?」

助手♂「行ってみますか!」

 

所長J「ふむ。勝山は秋鹿と違って、『相乗効果』狙いです。『相乗効果』で酒の旨味と肉の旨味を重ね合わせることになるので、①まずスペアリブを少し口に含んで、②肉が口に残っているうちに勝山を口に含んで、③よく咀嚼してみましょう。口内調味します。」

助手♂「なるほど・・・どれどれ・・・・・・」

助手♀「!?・・・これはっ!?」

助手♂「酒が、強くなった?」

所長J「強いというか・・・咀嚼している途中から甘味が増したかな?これはもしかしたらこれが旨味なのか?」

助手♂「旨味なのか甘味なのかは・・・前回同様またよく分かりません(笑)。しかしこれ、最初に飲んだときは、食前酒かなぁという気がしたのですが、今飲んでみると、全然食中酒としてイケるなぁ。甘さがくどくない。」

助手♀「メロンの香りもちょっと変わったような気がします。スペアリブと一緒になると『ぶわっ』って一気に香ってくるような気がします。」

所長J「きっとアツアツのスペアリブで、瞬間的に酒の温度が温まったんだろうね。」

助手♀「温度かぁ・・・。」

所長J「香りのメロンはどこに掛ってくるのか分からなかったので、チャート上だと、特に何の線も弾いてなかったんだけど、料理の『温度』が掛ってくるとは想定外だったね。」

助手♂「全般的に、秋鹿とは逆で、勝山が前面に出てくる感じで、スペアリブが勝山を引き立てていますね。そんな感じがします。」

所長J「同じ肉でも、真逆の結果か。面白い。まぁとりあえず最初の滑り出しとしては、こんなもんか。(よかった失敗しなくて・・・死刑は嫌だしな・・・)勝山もだれでも確認できるレベルの変化が出てくれて良かった。では続いて煮込みハンバーグに行ってみようか。」

 

[14日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 実食編②につづく

[12日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 調理編

[11日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 理論編②はこちらから

 

■≪不本意な現状≫(いま)を変えるのは『料理する(作る)』覚悟だ!

所長J「シェフなおみは音信不通か・・・」

助手♂「料理、どうしましょう?」

所長J「そうだなぁ、助手♂は料理が出来ない設定だし・・・」

助手♂「(設定ってなんだ・・・?)」

所長J「それともやっぱり料理できる設定にしておく?」

助手♂「(だから設定ってなんだ・・・?)」

所長J「まぁいいや、ここは素直に助手♀に頼むしかないか・・・・・・あ、もしもし・・・所長だが・・・」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
所長J「え?3品は無理?」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
所長J「なるほど、わかった。ではハンバーグとラタトュイユは頼む。レシピやアレンジは助手♀君の好きなようにして良いから。」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

所長J「スペアリブ・・・私が作ることになった・・・」

助手♂「えーっ!!」

 

■社畜コンサルの『矜持にかけて』

助手♂「所長は、日頃クライアントの業務設計やマニュアル作成をして、客に『仕事の仕方をああしろ』だの『こう変えろ』だの言っている『コンサルタント』ですから、まさか『料理のマニュアル=レシピ』を渡されたら料理ぐらい・・・できますよね?」

所長J「そりゃそうだが・・・いつも客にも『まずは騙されたと思ってマニュアル通りやって』と言ってるわけなので、マニュアル通りにやれば良いなら、私にもできんことはないだろう。私も騙されたと思ってやってみようではないか、ミッタマイヤー」

助手♂「(誰がミッタマイヤーだ。)」

所長J「というわけで材料です。」
 

材料

肉とマーマーレード以外はだいたい家にありそうです。

<材料>
骨付き豚肉(スペアリブ用)・・・1kg10~12本程度)
☆だしの素・・・10g
☆砂糖・・・大さじ2
蜂蜜・・・大さじ2
マーマレード・・・大さじ4
☆しょうゆ・・・大さじ4
☆みりん・・・大さじ2
☆酢・・・大さじ2
☆酒・・・大さじ2
 
所長J「まずはフライパンに油を引いて、骨付き豚肉を両面焼くと・・・少し焼色が付くくらい・・・で良いのだな。」
どうせ煮るので表面に焼き色が付くぐらいでOKです

どうせ煮るので表面に焼き色が付くぐらいでOKです

 

所長J「うちにはあまり大きななべが無いので、フライパンの油をふき取って、フライパンで煮込むことにする。脂を拭き取らないと、仕上がりが少し脂っぽくなるようだ。とりあえずは水を肉が浸るぐらいまで入れる・・・と。それを強火で熱して、沸騰しそうになったら弱火に落としてアクを取ります・・・なるほど。」
O型なので、灰汁取りもまぁ適当です

O型なので、灰汁取りもまぁ適当です

所長J「灰汁をとり終わったら☆の材料をすべて加えて、水分がなくなるまで弱火~中火で煮込む。なるほど、1時間半ぐらいでよいのかな?」
この時点ではなんだか味が薄そうですが、大丈夫です。煮詰まります。

この時点ではなんだか味が薄そうですが、大丈夫です。煮詰まります。

 

所長J「その間ビールでも飲みながら、アニメでもみてボーっと待ちます。」
助手♂「(そんなことレシピには書いてませんが・・・手順通りやるんじゃなかったのかよ、おい)」
秋の夜長に米アンカー社 ポーター

秋の夜長に米アンカー社 ポーター

 

所長J「忘れた頃に裏表を反対にする・・・と。30分おきぐらいでいいのかな?脂が気になるようなら、おたまで表面に浮いている油を掬っておきましょう、と・・・なるほど。たしかに二郎系ラーメンのような脂の層ができている・・・少し掬っておいた方が良いだろうか?」
「所長トング!」

裏表で味がバランスするようにひっくり返します。

所長J「一時間半ほど煮込むとあらかた水分がなくなってくるので、ここからは焦がさないように気を付けながら煮詰めていきます・・・ここちょっと記述が曖昧じゃないか?まぁいいか・・・照りが出てきたら上げてしまってOK・・・っと。」

汁が亡くなってきたら、お終いです。

焦がさないように気を付けましょう。

 

所長J「あとはこれをタッパーにつめればおしまい!」

仕上がりはこんな感じです。

仕上がりはこんな感じです。

所長J「・・・ふむ、やってみると意外と簡単だな。」

助手♂「私にもできそうですね。」

所長J「まぁくどいようだが、君は料理ができない設定だから・・・それはともかく助手♀の方はどうかな?」

 

■助手♀「ラタトュイユ」編

助手♀「どうでもいいですが、ラタトゥイユっていつからラタトゥイユになりました?」

助手♀「昔はラタトゥーユ表記だったと思いますが。食べ物でもなんでもいつの間にか表記や読み方が変わってますよね…そんなことを気にしつつ、ラタトュイユを作りたいと思います。」

助手♀「こちらは一人なので、一人でぶつぶつ言いながら進めたいと思います。まずは材料です」

DSC04679

<材料>
玉ねぎ・・・ 2個
ピーマン・・・3個
パプリカ・・・3個
エリンギ・・・2本
ズッキーニ・・・1本
茄子・・・2本(中くらい)
トマト・・・2個(中くらい)
トマト缶・・・2缶
にんにく・・・4~5かけ
オリーブオイル・・・大さじ4
家にあった鶏モモ肉・・・1パック

 

助手♀「ピーマンとパプリカは1.5センチ角ぐらいにカットします。玉ねぎもですね。エリンギは食べやすいサイズに切ればOKだと思います。」

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パプリカがあればピーマンは要らないかと思ったけど、やはり赤・黄・緑がそろうとなんか安定感があります

 

助手♀「ズッキーニと茄子は半月切りでいいですかね。にんにくはみじん切りにしておきましょう。」

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所長からズッキーニの指定があったのですが、この時期にズッキーニを調達するのはなかなか難儀でした

 

助手♀「鍋にオリーブオイルとにんにくを入れ、弱火であぶります。にんにくの香りが立ってきたらまずは鶏肉を中火で炒めます。続いて玉ねぎ、ズッキーニ、ナス、エリンギを炒めます。後で煮込みますから、油を絡める程度でOKです。」

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ちょっとナスが大きすぎたかもしれません

 

助手♀「続いてピーマンとパプリカ、大分彩り良くなってきました。」

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溢れんばかりの野菜・野菜・野菜・・・ちょっと分量をいろいろ間違えたかなぁ・・・

 

助手♀「油がなじんだらトマト缶を投入します。煮立ったら弱火に。その後は蓋をして30~40分ぐらい煮ます。」

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たまに底からかき混ぜます

 

助手♀「煮込み終わったら味を確かめます。ちょっと塩味うすいなぁ・・・と言う場合は、ここで塩を足して味を整えます。お酒と合わせるので少し塩味をつけた方が良いかもしれないって、そういえば所長が言っていました。(塩味は旨味を引き立てるので)」

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だいぶいい感じです(自画自賛)

 

■助手♀「煮込みハンバーグ」編

助手♀「そしてあともう一品作らないとならないのですか・・・ふぅ・・・所長も人使いが荒いですね。

助手♀「しかも『煮込み』ハンバーグ。煮込む必要は本当にあるのでしょうか?Anywayハンバーグを作って煮込みます。途中までは普通のハンバーグと同じです。」

<材料>
■ハンバーグのタネ
合挽ミンチ・・・250g
タマネギ・・・3/4個
卵・・・1個
牛乳・・・80〜100cc
パン粉・・・1/2カップ
ナツメグ・・・お好み
塩こしょう・・・少々

■ 煮込みソース
小麦粉・・・大さじ2
水・・・300〜350cc
固形コンソメ・・・1個
ウスターソース・・・大さじ3
ケチャップ・・・大さじ5
バター・・・大さじ1
タマネギ・・・1/4個
きのこ・・・適量

助手♀「まずは玉ねぎ、みじん切り。木端微塵にしてやるぜ!」

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フープロでムラなくみじん切りにします。

 

助手♀「貴様の苦みには反吐が出る。甘味が出るまで徹底的に炒めつけてやるぜ」

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玉ねぎを炒めます。軽くきつね色になるまでです。

 

助手♀「さぁ、残りの野郎ども、一網打尽にしてやるぜ。」

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炒めた玉ねぎふくめて、ハンバーグのタネの材料をすべてボウルに入れます。

 

助手♀「ネバネバネバ、生意気なやろうだぜ。手こずらせやがって。かゆくてもここで負けちゃならねぇ・・・」

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粘りが出るまで、良くかき混ぜて、小判型にまとめていきます。

 

助手♀「いい艶してるじゃねぇか、胸が高鳴ってくるぜ!」

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タネをの中心をへこませて中火で両面焼き色を付けていきます。

 

助手♀「鉄板の上でじっくり焼き上げてやったぜ(※注:煮込むのでそこまで火を通さなくても良いです)」

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焼き目がついたら、ハンバーグはお皿に挙げておきます。、焼き終えた肉汁はとっておきます

 

助手♀「ネタが尽きた・・・というか歌が尽きた・・・」

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煮込みソースを作っていきます。キノコはバラして、玉ねぎは繊維にそって細切りにしていきます。

 

助手♀「うっすら『黄金色?』って感じなるぐらいまで粘り強く炒めます。結構時間がかかります。」

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フライパンに小麦粉を入れ、中火で黄金色になるまで小麦粉を炒めます。

 

助手♀「小麦粉は取り出す。フライパンでキノコと玉ねぎをバターで炒める。小麦粉を戻してキノコと玉ねぎに絡める・・・それで水を入れて少しずつ小麦を伸ばします。」

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じゃばっと水を入れてしまいましたので、伸ばす間もなく・・・

助手♀「固形コンソメ、ウスターソース、ケチャップをいれて煮込んだらスープは完成。ここにハンバーグを入れて煮込んでいきます。弱火から中火で15分程度。」

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ちょっとウスターが強すぎたので、塩で味を整えました。

 

助手♀「できたっ!・・・二つ返事でOKしましたが結構めんどくさかったです。ただのハンバーグだったらそうでもなかったんですが・・・」

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見た目がすでに美味しそうです(自画自賛)

助手♀「これでペアリングを『外していたら』、所長は絶対『死刑』にします。」

 

[13日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 実食編①に続く

[11日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 理論編②

[9日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 企画編はこちらから

[10日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 理論編①はこちらから

 

■独眼竜の肉料理!?

所長J「やはり独眼竜になるには独眼竜が食した肉を食べるのが良いかと思ったのだが・・・」

助手♂「そうですね、独眼竜の肉料理ってなんでしょう?鷹狩の戦利品ですかね?」

所長J「その鷹狩なんだが、鷹狩で最高のごちそうとされているのは、まず雉で、次いで鶴、雁がランクインするらしい。」

鷹狩最高のごちそう 1位:雉、2位:鶴、3位:雁

鷹狩最高のごちそう 1位:雉、2位:鶴、3位:雁

助手♂「雉・・・鶴・・・雁!?・・・調理法は???『雉どんぶり』とかはたまに見ますが。それ以前にこれらの肉はどこで売ってるんでしょうね?」

所長J「さ、さぁ・・・?雁といったらだいぞうじいさんにでも頼むしかないんじゃない?(適当)」

助手♂「だいぞうじいさん、残雪・・・テラナツカシス。」

所長J「だいぞうじいさんに頼むにしても雁猟自体、現在では禁止されてるけどな。雉にしてもそんな顔でこっち見られたら、『喰ってやる』って気分じゃなくなるよな。鶴もなんだかバチがあたりそうだし。」

助手♂「鳥以外だと、鷹狩ではどんな動物が狩る対象になるんですか?」

所長J「鳥以外だと、兎とか鹿だな。まぁこの辺なら昔ハナマサで売ってるのをみたことあるな。」

助手♂「兎・・・ああっ!売ってたわ!・・・思い出してしまった!!!あのコロンとした感触!!!」

所長J「(なにか良くないものを思い出させてしまったらしい・・・)」

助手♂「・・・・・・・・・よし、忘れよう。それにしても鷹狩では鹿みたいな大きな動物も狩れるんですね?」

所長J「鷹が鹿を狩るシーンはニコ動ででも見てくれ。鷹がこんなにダイナミックに鹿を狩るとは・・・正宗公や徳川家康が鷹狩にハマるのもわからなくはないな。」

 

■1回戦:肉の旨味を閉じ込めた煮込みハンバーグ

所長J「雉/鶴/雁に比べて鹿とか兎の入手難易度が低いとは言ったって、近所のスーパーに並んでるわけではないよね。」

助手♂「まぁ見かけないですね。」

所長J「じゃ、食材としてはダメだ。この企画、家で容易に再現できないような酒と料理のペアリングはあまり考えたくないんだよね。」

助手♂「再現?」

所長J「そう。やっぱり記事を見た奥様方が、家でホームパーティーをやってキャハハ、ウフフしながら、日本酒でどすこいするような感じじゃないと。」

助手♂「(・・・日本酒でどすこい???)」

所長J「要するに『スタイリッシュでコケティッシュながらパンチの効いたホームパーティー』を簡単に出来るようなペアリングを考えるところに、研究所としては価値があると思う訳よ。」

助手♂「ニッチ過ぎて何を言っているのかさっぱりわかりません(酔ってるのかこいつは?)。・・・で、そのスタイリッシュでコケティッシュでパンチの効いたホームパーティーとやらにはどんな料理を用意したら良いって言うんです?」

所長J「前回のペアリングラボ菊姫編ではペアリングする料理を3品考えたのだが、今回も3品ぐらいを組み合わせてみようと思う。まずは煮込みハンバーグだ。」

助手♂「・・・・・・ちょっと待ってください・・・・・・なんですかそれは?いたって普通じゃないですか?」

所長J「いやいやいや、まてまてまて。日本酒に合わせる料理で『煮込みハンバーグ』とか言ったらもうちょっと驚いてもいいんじゃないか?だって煮込みハンバーグだよ、普通日本酒と一緒に食わないだろう?」

助手♂「うーん、いやそうなんですが、どうも『捻り』がいまいち足りてないような・・・・・・雉の爪の垢でも煎じて飲んでみたらどうですか?」

所長J「・・・むむっ、どうやら今日は料理紹介前の前フリのインパクトが大きすぎたようだ。」

助手♂「そりゃそうでしょう。本題に入る前に、一体何文字使っていると思っているんです?」

焼くより煮込んだ方が旨味が増すんじゃない(適当)

焼くより煮込んだ方が旨味が増すんじゃない(適当)

所長J「・・・・・・仮説の説明していい?」

助手♂「どうぞ。」

所長J「もう少し興味を持とうか?」

助手♂「真顔で迫らないでください。」

所長J「・・・さて、気を取り直して。チャートは前回と同じつくりになっている。今回の煮込みハンバーグと勝山・秋鹿のペアリングでは『相乗効果』『対比効果』『抑制効果』がそれぞれ期待できるけど、注目したいのは赤い線。勝山から煮込みハンバーグに延びている『相乗効果』と秋鹿から伸びている『対比効果』ということになる。」

助手♂「これが今回のテーマで一番重要な線ですね。他にもいろいろ伸びてますね。」

所長J「他の矢印だと、大事そうなのは、ウスターソースの『塩味』から伸びている勝山の『甘味』への『対比効果』かな。勝山の『甘味』がかなり強いのだが、ウスターソースの『塩味』ででさらに甘さを際立たせるのか、あるいは『甘味』×『甘味』で『相乗効果』を狙った方が良いかは次の料理で検証してみようと思う。」

 

■2回戦:甘く煮込んだ骨付きスペアリブ

所長Jの得意料理でもあるのです

所長Jの得意料理でもあるのです

助手♂「スペアリブですか・・・まぁ確かにスペアリブと日本酒を掛け合わせようと思ったことはこれまで一度もないですね。」

所長J「(おっ、少しは興味を持った?)ふむ。勝山と料理の旨味の『相乗効果』、それから秋鹿と料理の旨味の『対比効果』を狙うというのは、煮込みハンバーグと同じ。スペアリブで違うのは、料理がしょっぱいか甘いか?・・・だね。」

助手♂「レシピは・・・結構和風な味付けですか?」

所長J「蜂蜜と砂糖をかなり使うし、少しマーマレードも足す予定。よってかなり甘い肉料理になると思う。勝山はもともとかなり甘い酒なので、そのスペアリブ相手だとさらに『甘味』に『甘味』を重ねることになる(『相乗効果』)。また対秋鹿と言う意味では、スペアリブの甘さが秋鹿の渋味や苦味を『抑制』する効果が発揮される・・・かもしれない。」

助手♂「なるほど。」

所長J「そのどちらがペアリングとして心地よいか・・・ってところをスペアリブでは検証したいと思う。あと書くの忘れたけど醤油にも『旨味』成分があるね。醤油の旨味の『相乗効果』『対比効果』も頭の片隅には置いておきたい。」

 

■3回戦:肉以外の旨味とのペアリング-ラタトゥイユ

肉以外の旨味との組み合わせはどうか?

肉以外の旨味との組み合わせはどうか?

助手♂「最後は・・・ラタトゥイユですか・・・。まぁこれまたあまり日本酒と合わせたことはないですね。」

所長J「ラタトュイユのテーマは『旨味だったら何でもよいのか』だね。基本的には肉の旨味と日本酒の組み合わせが今回の基軸なのだけど、野菜にも旨味はあるだろう?」

助手♂「旨味成分にはグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などいろんなものがありますが・・・」

所長J「改めて整理すると、肉類はイノシン酸だねぇ。豚>牛>鳥の順で、旨味成分は強いと言われているね。野菜だとシイタケとかはグアニル酸、トマトや玉ねぎはグルタミン酸になる。日本酒の旨味成分は、グルタミン酸と言われているけれども、そうだとしたら・・・」

助手♂「ハンバーグとスペアリブは『イノシン酸(料理)×グルタミン酸(酒)』。ラタトュイユは『グルタミン酸(料理)×グルタミン酸(酒)』ということになりますね。」

所長J「旨味は異なる旨味同士を掛け合わせた方が良いと言われているけれども、そうだとするとラタトュイユと勝山の組み合わせは、ちょっと単調な味になってしまう可能性はあるね。あくまで可能性だが。」

助手♂「なるほど。その辺がラタトュイユでの検証ポイントですね。」

 

所長J「あとはシェフなおみが、ラタトュイユの野菜として何を入れてくるか次第だね。まぁたぶん掲載されているレシピ通りには、そのまま作らないだろうから。」

助手♂「では、さっそく料理をお願いしましょう。」

所長J「そうだな、では電話をしてだな・・・・・・・・・・・・・・・ってあれ?」

助手♂「どうしたんです?」

所長J「・・・・・・・・・電話が繋がらないぞ!?」  → その頃シェフなおみは・・・

 

[12日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 調理編につづく

 

[10日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 理論編①

第2弾「独眼竜に俺はなる!」 [9日目]企画編はこちらから

 

■基本の相互効果チャートから読み解く「肉に合う酒」の条件

所長J「まずは基本の相互チャートに立ち戻って考えてみようか。そもそも、肉のような旨みの素材を引き立てるにはどうしたらよいかという話なのだが・・・」

助手♂「旨味に向かっては三本の矢印が伸びていますね。」

肉の旨味と「①相乗効果を狙う」か「②対比効果を狙うか」か?

肉の旨味と「①相乗効果を狙う」か「②対比効果を狙うか」か?

助手♂「三本のうち『渋味』の矢印だけ太いのは何か意味があるんですか?」

所長J「むむっ・・・それはただの誤植だ。深い意味はない。」

助手♂「(ただの誤植かよ!?)」

所長J「本当は苦味と塩味も太い矢印にしなきゃいけなかったのだが・・・忘れてた。」

助手♂「なるほど。ま、じゃ気が向いたときに直してください(とても本職が社畜コンサルとは思えないドキュメンテーションに対するこだわりのなさ・・・)。ところでこの実線の矢印は・・・ずばり『対比効果(Counter)』ですね。」

所長J「いかにも。『塩味』『苦味』『渋味』には『旨味』を引き立てる効果があるよね。簡単な例を出すと、『肉×岩塩』。味付けのない肉を食べるのは結構苦痛だが、塩を振るだけで、あら不思議!簡単に肉の旨味を引き出される。あれは単に塩味に味付けしているわけじゃなくて、旨味を引き出すために塩を振ってるわけだね。」

助手♂「しかし、そうだとしても・・・しょっぱい日本酒ってないですよね?」

所長J「ないな。酒(アルコール)自体が、酵母が糖分を食べて出来上がるものだから、その原理から言ってもしょっぱい日本酒と言うのはない。」

助手♂「となると、『苦味』や『渋味』のある日本酒を探すということになりますね?」

所長J「そういうことになるな。それは仮説の一つだね。もうひとつのか可能性は前回助手♂が言ってた『旨味』×『旨味』。肉の『旨味』に日本酒の『旨味』を重ねて『相乗効果』を出すやり方。」

助手♂「『旨味』と『旨味』のマリアージュですね」

所長J「ペ・ア・リ・ン・グだ。独身の前でマリアージュとか言うんじゃねーよ、ボケが。」

助手♂「え、そんな理由で『ペアリング』ラボなんですか?」

所長J「あ”?・・・それもあるが、『マリアージュラボ』だと、なんだか結婚相談所みたいだからなぁ・・・まぁそれはともかく、話を戻すと、今言った『旨味×旨味』のペアリングが今回日本酒を選ぶポイントの二つ目かな?」

助手♂「なるほど。『苦味・渋味で肉の旨味を引き立てる』か『旨味を重ねる』ですね。しっかしこの会話の順番だったら、普通は説明資料のペアリング仮説①(緑のボックス)が「塩味・苦味・渋味による対比効果を狙う」で、ペアリング仮説②が「旨味を重ねて相乗効果を狙う」じゃないですか?」

所長J「君は私の上司か、リアルでの?これだからA型は嫌いだよ、やだやだ。こまけぇことはいいんだよ。」

 

■ペアリング仮説①:肉の旨味に酒の旨味を合わせて『相乗効果』を狙う

スライド3

圧倒的な「旨味・旨味・旨味」。「独眼竜に俺はなる!」ならこの一本か?

所長J「(気を取り直して)まずは、肉の旨味を引き立てる、『旨味あふれる日本酒』というと、これ。」

助手♂「これ、ワインですか?カッコいい瓶ですね!瓶の下部の紋章は?ジオン軍!?」

所長J「言われてみればジオン軍っぽいが、ジオン軍ではないし、ワインでもない。これは日本酒だよ!仙台の勝山酒造さんの『勝山 䴇 SAPPHIRE LABEL』。」

助手♂「『䴇』・・・読めなひ・・・。」

所長J「『かつやま れい さふぁいあ らべる』と読みます」

助手♂「勝山酒造さんですか・・・失礼ながら初めて聞きました。」

所長J「細かい歴史は、ホームページのHistoryを読んでくれ(F-22ラプターなどの酒蔵らしからぬ言葉が飛び交っているが・・・)。伊達家御用蔵として長い伝統を持つ酒造だけど、名前を良く聞くようになったのはここ2年ぐらいだとか?ちなみに、私が耳にしたのは先週だ。」

助手♂「素人感全開ですね・・・」

所長J「だって素人だもの。さてこの勝山『䴇シリーズ』は、コンセプトが『日本酒が苦手とされてきた肉料理と合わせるための新発想の日本酒』なので、肉とのペアリングの候補としてはかなり自信がある。特徴は低く抑えられたアルコール度数とそれでもまったく細くない骨太な『旨味』だね。」

助手♂「普通、日本酒って15-16%ぐらいですから、結構度数低いですね。12%というとだいたい白ワインぐらいですかね?」

所長J「だいたいね。アルコール度数16%だと、やはりアルコールそれ自体が食事とのペアリングで邪魔になったりするからね。それにしても度数12%に抑えつつもきっちり旨味を持たせるのはつくりとしては相当難しいんじゃないかな・・・蔵の努力と技術の賜物だと思う。香りはメロンのような感じで、味はとても甘い。肉と合わせると『生ハムメロン』的なフレーバーの妙味を味わうことが出来る(かもしれない)し、塩辛い肉料理と合わせると甘さもグッと引き立つ(『対比効果』)と思う。とはいえ、楽しみたいのはやはり『旨味』と『旨味』の共演。あまり行儀は良くないと思うけど、肉を頬張って、勝山を口に含み、口内で咀嚼して混ぜてみるとみると、『あ、これが旨味と旨味の相乗効果か!」とうのが分かる、と思う。」

助手♂「なるほどいきなりゴックンしない方が良いってことですね。」

所長J「まぁ今回に限らず、実はペアリングは普通そうするもんだよ。」

助手♂「へぇ・・・」

所長J「食べ物に直接酒をかけるというやり方もあるが・・・まぁ今回はそこまではやらないでもいいか。そのうち冬になってきたらしゃぶしゃぶした肉を日本酒につけてから食べる・・・とかをやってみても良いかもしれない。」

助手♂「ところで、これが(サファイアラベル)『䴇シリーズ』シリーズで一番安い酒なんですか?」

所長J「そうだね。本当はもう少し中堅どころの(例えばルビーとかエメラルド)やつが良かったんだけど、うちの研究所にはそんなに研究費がないからなぁ(ぶつぶつ)。」

勝山の日本酒ラインナップはこちら

 

■ペアリング仮説②:渋味・苦味・塩味の『対比効果』で肉の旨味を引き立てる

スライド4

他の日本酒には見られない、オーガニックな渋味や苦味が特徴!?

所長J「それから仮説②の渋味・苦味・塩味の『対比効果』狙いの日本酒だが・・・秋鹿 ひやおろし 倉垣村 純米吟醸。」

助手♂「お、ひやおろしですか?」

所長J「ひやおろしだね。やっぱり少しは秋を意識して選んでみた。しかし自分で仮説を立てておいてあれだが、仮説②の酒を選ぶのはかなり難しい。仮説①はすんなり候補が思いついたんだけど。そもそも塩味の日本酒はないし、『渋味は赤ワイン』『苦味はビール』が得意とする味で、日本酒の基本的な味ではないからね。」

助手♂「たしかに」

所長J「困りに困って素直に、『何かないですか?』と酒屋で聞いたら出てきたのがこれ。店でのコメントによると『タンニンっぽい渋みや苦味がある』とか?ぶっちゃけ飲んでないので、現時点で味についてとやかく申し上げることはできないね。」

助手♂「となるとネット上での評価を引用するしかないですが・・・」

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徳島県産の《山田錦》を100%使用。やわらかで控えめな吟醸香、《山田錦》ならではのまろやかな旨みと秋鹿らしいしっかりした酸がみごとに調和した豊醇辛口の味わいが魅力。
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助手♂「分かるような分からないような・・・それはともかく、少なくとも渋いとか苦いとか言う記述はないですね。他のサイトだと次のように書かれています」

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秋鹿さんならではの落ち着いた香りまろやかな口当たり、米の濃醇な旨みとコクがじんわりと広がり張りのある酸、後味は辛口な味わいはまさに秋の旬の味覚にピッタリ。秋の食材とじっくりと味わいたいお酒、お燗も◎

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助手♂「ここにも特にタンニンっぽいニュアンスのコメントはないですね。」

所長J「米はどう転がしてもタンニンを生まないはずなんだけど・・・前回の菊姫以上に味の記憶がないというかそもそも飲んだ経験がないわけだが、最終的な味については、ふたを開けて見てからのお楽しみとしか言いようがないな。」

助手♂「そうですね。では、お酒はこれとして、合わせる肉料理について、次は検討して見ようか。」

 

[11日目]日本酒ペアリング 第2弾「独眼竜に俺はなる!」 理論編②につづく